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第28話
シャワーを浴びてさっぱりした後、盛大に鳴った俺のお腹の音に楽しそうに笑う佑真さんの笑顔を見ていて俺はやっぱり佑真さんには笑っていてほしいと思った。
「お腹いっぱいだ」
ソファに身体を投げ出すとちょうどよく沈む高級そうなソファが俺を睡魔に誘ってくる。
「翔、そこで寝るなよ」
重くなっていく瞼で瞬きをゆっくり繰り返す俺に足を組んで頬杖をついた佑真さんがふっと笑った。
あぁ、かっこいいな。
このソファの気持ちよさも優しく笑う佑真さんも憶 えている。憶えているのに思い出せない、夢を思い出そうとするそんな感じに似ている。
「ベッドで寝ろよ」
「起きて、ます」
眠ってしまえば佑真さんが離れていく気がして、目をこすりながらこのふわふわと包み込むようなソファで眠気と格闘していた。
「翔」
「嫌、です」
俺の腕を掴んで立たせようとする佑真さんに自分でも情けないと思いながらも子供みたいに首を振る。
「どうして?」
穏やかな透き通る声に俺の鼓動が大きく鳴った。いつもの嫌な感じではなく、胸がさわいで、くすぐったいような。
でもこの感情を何て言えば……女の子なら離れたくないとか言えるのかもしれないけど、俺は男だし、男に言われても困るだろうし、何よりそんな恥ずかしいセリフ言えない。
ぼんやりとした視界の中で佑真さんが困ったように笑っていた。
あぁ、言わなくても困らせている。
「寝ま、す」
睡魔に支配された身体は鈍く、立ち上がりふらつく俺を佑真さんが支えてくれた。
子供じゃないんだから眠すぎてひとりじゃベッドまでいけないってどうなんだよ。
慎吾にだってここまで世話かけてない、と、思う。
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