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第29話
ベッドに腰掛けるとその広さとシーツの冷たさに寂しさが湧いてくる。
どうしてこんなに寂しくなるんだろう。
寂しくてひとりで眠れなかった事なんかなかったのに……。
「おやすみ」
「い、やだっ」
俺の頭を一度撫 でた佑真さんの手が離れていく寂しさに耐えきれなくなった俺はその手を思わず掴んでしまう。
「悪かった」
少し驚いて申し訳なさそう謝る佑真さんの表情に睡魔に襲われていた頭がはっきりした。
「佑真さん!」
「翔……?」
離れようとする佑真さんの手を強く握り直した俺の力の強さに驚いたのか少し目を見開いて真っ直ぐ見つめる俺を見つめ返した。
「どうして佑真さんが謝るんです?」
「落ち着け、翔」
「落ち着いてますよ!俺史上始まって以来の落ち着きです!」
理由を話すことを躊躇 う佑真さんに苛立って詰め寄った。
「俺が困らせているんですか?」
困惑したような表情を浮かべる佑真さんから視線を落として溜息をついた。
「翔……」
佑真さんに優しく髪を梳 かれ抱き寄せられると、聞こえてくる佑真さんの静かな鼓動に不安も苛立ちも消え、そっと目を閉じた。
「触られるのが嫌なのかと――」
「嫌じゃないですよ」
驚いて顔をあげると佑真さんの顔が近くて、間近で見るイケメンの破壊力に俺の心臓がざわつく。
「俺、佑真さんの心臓の音聞くと何か落ち着くんです。人の心臓の音って落ち着くって聞いたことあったけど本当だなぁって」
熱くなる顔を背けて早口で話した。
「なら、いい」
ふっと笑う佑真さんの吐息が耳にかかると背中がぞくぞくして力が抜ける。
「翔?」
「――っ佑真さんっそれやめてくださっ」
「それって?」
腰から崩れ落ちそうな俺をしっかり支えながら耳元で囁く佑真さんの声が楽しそうだ。
絶対わざとだろ、この人。
半分力の抜けた俺をベッドに寝かせると、佑真さんも隣に寝転んで欠伸をした。
隣に感じる佑真さんの気配に安心して、再び襲ってきた眠気に意識を手放した。
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