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第41話
病院に着くまでの1時間、車が揺れるたびに痛みと格闘していた。1時間ほどで着くと涼介君が言っていたから、それくらいなんだろうけど俺にはそれ以上に感じた。
痛みのおかげで感傷に浸る暇もなく有り難いと言えば有り難かった。
知り合いだという自宅も兼 ねている個人病院は診察前にも関わらず快 く診てくれた。
「川に落ちたんだって?」
白髪交じりの眼鏡をかけ訊ねる初老の医師の物腰は柔らかい。
その雰囲気に親身に俺の話を聞いてくれた沢渡教授を思い出した。何かあったらいつでもおいでと励ましてくれた沢渡教授にあれ以来、会ってない。落ち着いたら手紙でも書いてみようかな。
「話せるかい?」
診察台に上半身裸でうつ伏せのままぼんやりしていた俺に心配そうに訊ねる先生の声が聞こえた。
「あ、はい。背中から落ちて――」
「高さはわかるかな」
慌てて答える俺に頷きながら質問が続いた。
「高さ……手が届きそうなくらい?」
「ぶはっ。1メートルくらいじゃねぇの」
覗き込んだ眩しく光る川を思い出し、そのまま口に出した俺をカーテンが引かれた診察台の外から吹き出して笑い涼介君が答えた。
「ふむ。湿布を貼って様子を見てみようか。2~3日で腫れは引くと思うよ、若いからね。しばらくは安静にしていないとだめだよ」
話しながら背中に2枚湿布を貼ってくれる。触られると痛いけど冷たさが気持ちよかった。
「ありがとうございます」
ゆっくり体を起こしてTシャツを着る。それだけで思わず呻 いてしまうほど痛い。腕を上げたり首を動かしたりするのに、こんなにも背中の筋肉を使っていたことを知った。
「痛み止めも出しておくよ。痛くても飲みすぎないように、5時間は間隔をあけてね。それと、熱が出るかもしれないから解熱剤も出しておくよ、受付でもらって帰ってくださいね」
カルテにペンを走らせながら先生が丁寧に説明してくれた。
「お世話になりました」
頭を下げて立ち上がろうとした時、カーテンが開いて涼介君が俺を支えてくれた。
相変わらず無表情のままだけど、すごく気遣ってくれるんだよな。
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