52 / 83

第52話

 雪が積もり出すと岩下さんや山口さんの言っていた大変さを身をもって知ることになった。雪が積もるなんてかわいいものじゃない、雪に()もれるだ。 雪かきなどしたことがない身体は筋肉痛で悲鳴をあげている。 雪が積もるのを楽しみにしていた甘い考えの俺を殴ってやりたい。 「翔、明日も雪だって」 筋肉痛の身体を引き()りながら帰って来た俺に、リビングのソファに座り天気予報を見ていた涼介君が意地悪く笑う。 「嫌だぁ」 雪が降る日はいつもより早く出勤して雪かきをする。昨日取り除いた雪が今日には同じように積もっているのを見ると何の試練だろうと思う。 「そんなとこで寝んなよ」 ソファに半分身体を預けしゃがみ込み、うとうとする俺に涼介君が声をかける。 「わかってる……」 わかってはいるけど、なかなか動く気力が出ないうちに睡魔が襲ってくる。 「――ったく」 「わかってる、ってば」 溜息をつきながら俺の腕を掴んで立ち上がらせる涼介君に意識は半分眠りの中で足元がふわふわしてしまう。 「翔君どうかしたのかい?」 涼介君に支えられながら階段まで辿り着き、玄関から聞こえる努さんの声にぼんやりしながら振り返りバランスを崩した俺を支える涼介君の手に力が入る。 「半分寝てるだけだ。おい、しっかり立てって」 「翔君お疲れねぇ。涼介は翔君には甘いわね」 沙代子さんの明るく笑う声が耳に心地いい。 舌打ちをして階段を上りはじめた涼介君に引っ張られながら部屋まで辿り着いた。 「涼介君、ありがとな」 上着を脱いで布団に潜り込む俺を見て部屋を出て行こうとした涼介君に声をかけた。 「世話がやけんだよ、あんたは」 部屋を出て行った涼介君の素っ気ない言い方の中に優しさを感じて暖かい眠りに落ちていった。 俺の出会う人達は俺を甘やかしてくれる人が多い、甘えてばかりじゃだめだと思いながら甘えられる事が嬉しくて、つい甘えてしまうのが俺の悪い癖だ。 俺がみんなにもらったたくさんの優しさを同じくらい返せればいいんだけど……。

ともだちにシェアしよう!