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第79話
佑真さんが迎えに来てくれた頃には暗くなっていた。
少ない荷物をトランクに乗せるとここを離れる寂しさが込み上げる。
「翔君、翔君、すっごいイケメンだね」
車に寄りかかり微笑む佑真さんを見て涼香ちゃんが興奮した声を出す。
俺がいなくなると寂しいと泣いてくれた涼香ちゃんもイケメンには弱いのか。
「そうだな」
仕方ないと思いながら苦笑した。
「あの人と一緒に遊びに来てね!絶対だよ!」
俺の腕を掴みながら約束ねと明るく笑う涼香ちゃんに俺はおまけなんじゃないだろうかと複雑な気持ちで頷いた。
イケメンって得だよなと思いながら佑真さんに視線を向けると涼介君と話していて、しばらく不機嫌そうな顔をした後、自信たっぷりに余裕の笑みを浮かべる佑真さんから不機嫌そうな顔をした涼介君が踵 を返した。
何の話をしたらそんな険悪な雰囲気になるんだよ。
「涼介君は俺を年上だと思っていないかもしれないけど、何かあったら連絡しろよ」
すれ違う涼介君にそう言って車に向かおうとする俺の腕を涼介君が掴んだ。
「俺、翔を拾ってよかったと思ってるから」
「それは嬉しいけど、その拾ったって言い方いい加減やめろよな」
振り返って笑う俺に涼介君も笑っていた。
「じゃあ俺行くけど、二人とも元気で」
俺の言葉に泣きそうな顔をする涼香ちゃんがそれでも明るく笑ってくれた。
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