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第13話

その後も 週に2~3回のペースで部長に誘われ イタリアンだの、フレンチだの、 他に中華、和食……と、 色んな(高そうな)お店に連れていってもらった。 いつも部長は恋人をエスコートするように 優しく接してくれる。 でも……… あのキスの日以来 軽く抱きしめられるコトはあるものの キスも、それ以上のコトもなく… 嬉しいような寂しいような そんなことを思う自分に悶々としながら 日々を過ごしていた。 ☆ ☆ 『泉、最近 太った?』 外回りの後、一緒になった梶と 遅い昼食をとりながら そんなコトを言われた。 『……………へ?え…そ、そう?』 『うん。まー、お前痩せすぎてたからさ  今のが健康的でいいと思うよ。』 ニコニコ笑う梶は、天丼と そばのセットを もりもり食べている。 お前は最近 太ったって言ってるけど 食べ過ぎが原因だと思うぞ、俺は。 まあ、健康的でいいけど、さ。 『………あー、うん。そっか…な?』 部長とデート?するようになってから 美味しいモノたくさん食べてるもんな~。 『うんうん。マジ、肌ツヤ いいしさ  今なら彼女ゲット出来るんじゃない?』 『へ?彼女………?』 『うん。絶対出来る!俺が保証する!  ……ってワケでさ、合コン、行かない?』 『…………は?ご、合コン??』 『俺も一緒に行くからさ♪行こーぜ、合コン!』 『……合コンって……お前、彼女はいいのかよ。』 彼女がありながら合コンとか ありえねーだろ。 結婚するって言ってんのにさ。 ワカメうどんのワカメを 口に放り込んだところで 梶が急に不機嫌な顔になって、ぷいっと横を背けた。 『…………別れた。』 『…………ほぇ??』 『だから、別れた。』 『………っむはっ!…は?え?わ……わか……?』 『だーかーらー!別れたのっ!』 『……………………は………はああっ!?  別れたぁぁっ!?か、彼女とっ!?』 『………うん。そう。』 『…え………えぇぇ……?』 『だから、合コン!行こうぜ!』 『……え……えぇぇぇ……』 ちょ、ちょっと待って……? え、別れたの?? 梶のヤツ……彼女と……別れたの??? え、ちょっと待って?? じゃあ、部長が…梶と…… 部長と……梶が……つきあうとか…… あり……ってコト?! ………え、ええぇ??? 『お前……マジで……本当に?』 『……え?あー、本当に本当。  つか、何度も聞くなよなー。  これでも何日か落ち込んだんだからなー?』 『何日か かよ……』 『いいじゃん。俺、立ち直りは早い方なの。』 『あ……そ、そう…なんだ…』 ウソだろ……. マジか…… いや……待て、落ち着け、俺。 いくら梶が彼女と別れて フリーになったとしても、だ。 梶が男と つきあうって観念がない限り 俺が部長を止める理由は なくならない……よな?? 俺が梶を守る理由はなくならない……よな?? ……うん。大丈夫。 なくならない、なくならない。 自分にそう言い聞かせ なんとか、ワカメうどんを食べ終えた俺は 梶と合コンに行くのもアリかも……と思い始めていた。 もちろん、俺ではなく 梶の新しい彼女をゲットするために。

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