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第14話
◇
「しかし桂斗君の告白タイムは、凄い感動したな。あれだけ愛されてたら、そりゃあ遥さんも目覚めちゃうよなぁ」
「そんなに良かったのか?」
オフィスに戻る途中の車内の中で、玖珂が感慨深く話し出した。
その告白タイムを見れなかった身としては、少し告白の内容に興味が湧いてしまう。
「出会った時に一目惚れしてたとか、何年もずっと好きだったとか、死ぬまで一緒だとか、もう怒涛の純愛ワードが連発だったんだぜ」
「へぇ。あの桂斗君が」
年齢は俺達と同じ二十五才か。あの年でそんな事を本気で言い切れる者はそうはいないだろう。
他人をそこまで想い続けられるなんて、今の自分には考えられない感覚だった。
尤も、家族も離散してしまった身としては、人並みに人を愛する事すら出来るかどうか、曖昧だが。
そう考えていると、信号待ちで止まり、横から視線を感じた。
「何だ?」
「いや……。そういえば、俺も同じだなと思ってさ」
「だから何がだ」
「俺も、水祝を高校の入学式の日に一目惚れしたんだよなって、今思い出した」
「……」
「桜が舞い散ってる教室の中で一人、五十音順で任された日直日誌を書いてるのを見た時、凄い綺麗な子だな好きだなって感情が、ぶわって湧き上がって衝動を止められなかったんだよ」
「その後の口説き文句は最低過ぎて、そんな雰囲気は微塵も感じられなかったが」
「今だったら、もう少し気の利く言葉を考えるよ」
うんざりした顔で返すと、あの頃とは違って確かな熱を持ちながらも、余裕を見せた瞳で、くすりと笑った。
「だからさ。今日は俺の家に来てよ」
「意味が全く分からない。どうしてそういう展開になるんだ……」
警戒を弛めずに聞くと、彼はやや困った顔で前を向いた。
「うーん。金狐がさ、いい加減水祝を家に呼べって最近煩いんだよ」
「何で」
「あいつが水祝の為にわざわざ考えて作らせた物が完成したのに、何で早く見せないんだって、さっきから頭の中で煩くて煩くて」
「どうして金狐様が俺の為に?」
「勿論、俺が水祝を大好きだから。金狐も昔から興味持ってたし」
「そんな話しは初耳だぞ」
「当たり前じゃん。これ以上ライバル増やしたくないから、黙ってたに決まってるだろ」
「何を訳の分からない事を、偉そうに言ってるんだ……」
しかし、あの金狐が自分を気にしているとは、内心驚いた。なまじっかな精霊では到底太刀打ち出来ないだろう、あの圧倒的な浄火の力を持つ孤高の火の精霊が、玖珂以外の人間に興味を持つなんて。
でももし金狐と上手く接触出来たら、自分の中のモノと意志疎通出来るヒントを何かしら見つけられるかもしれない。
「行ってもいいけど、もし嘘だったらぶっ飛ばすからな」
「え……、本当に来てくれるの!?」
「今日は金狐様に助けて貰ったし、何かお礼をしなければいけないと思ってたし」
理由を一つ一つ述べて、説明してやる。
「今晩はお礼にお稲荷さん作りたいから、台所貸してくれ」
「がってんしょうちっ!」
奥さんみたいな台詞を聞けるとはっ!匠真感激!と相変わらず頭が悪そうな言葉を叫んで、信号が青に変わった道路で、彼はアクセルを踏み込んだ。
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