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第3話

ミラクル総支配人 「略して『MSS』だ」 「………」 「………」 「………」 「驚きの余り声も出ないようだね」 瞳は赤 そこに彼岸花が咲いている。 「それとも再会の喜びで感動しているのかな?」 「はっ?」 漆黒の闇の淵に彼岸花が咲いている…… 瞼に触れる前髪を指が払うと、真っ赤な彼岸花が秀麗な面持ちに咲き誇った。 (美しい……) 一瞬でも思ってしまった俺は不覚だ。 「はっ……じゃないよ。お返事は『はい』だ」 彼岸花が揺れている。 目の前で…… 彼岸花の中に俺がいる。 俺が映っている。 お前の瞳の中に…… 「目上の人に対するお返事、習わなかったかい?」 声が出ない。 首も振れない。 まるで意識が取り込まれているんだ…… ………そうかい? と……… 耳元を撫でた(こえ)の静けさと、喉をすっと伝った熱の激しさ 彼岸花の真っ赤な熱が、指の先から喉笛に伝播(でんぱ)する。 一瞬触れられた喉が熱い。 「じゃあ、お兄様が教えてあげないとね」 …………………………はっ? (なんつった?) 「お返事は『はっ』じゃない。『はい』だ」 「そうじゃない!」 「言う事をきかないと、お兄様がお仕置きだよ」 「それ!」 「なんだ?お仕置きをして欲しいのか」 「そうじゃないッ」 「嫌なら、お兄様の言う事をきこうね」 「それだ!」 それ!! どうして、お前が……… 「お兄様なんだァァァァーッ!!」

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