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第13話
流されちゃだめ……なのに。
(拒めない)
もう体はお前が……
お前が……
(あなたが欲しい)
体が体を欲している。
足りない場所をあなたで埋めて……
「強情だね」
耳朶を熱い吐息が這う。
「まだ私を欲しようとしない」
なんで?
体を重ねて、熱を重ねたら分かるだろう。
俺は、こんなにも……
「声、我慢しているのか」
ハファっ
気持ち良すぎて……
溜め息とも喘ぎともつかない声を出そうとする度に、キスで口を塞がれる。
「いけない子だね」
いけない事するのは、あなたの方
「……こっちおいで」
重ねていた体が擦れ違う。
(どうして離れたんだ?)
髪の毛撫でて、手を握って、口づけしてくれたのに。
あなたが離れた。
こっちにおいで……
と、クイーンサイズのベッドの端に誘導する。
「来たらいいもの、見せてあげるよ」
きっと、これが最後の選択だ。
ここから
この部屋から
あなたから
逃げられる最後のチャンスだ。
この部屋を出たら、あなたは追いかけない。
きっと、もう……
俺達は。
(MSSとエグゼクティブ・バトラーの関係だ)
お兄様だというあなたは、もう『お兄様』にもなってくれないだろう。
(そうなるのを望んでいた)
筈、なのに…………
「いい子だ」
俺はもう
(この選択肢しか選べないんだ)
「教えろよ、あなたの名前」
あなたに抱きついて、あなたを抱きしめて、その手をきゅっと握る。
あなたの鼓動まで、俺のものにしたい!!
あなたの心臓の音、聞こえるね……
俺があなたの胸に、ぴったり顔をうずめてるからか………
「名前は昔、教えた筈だよ」
吐息が髪を撫でた。
俺達は出逢ってる?
じゃあ、ほんとうにあなたは俺の兄?
「ご褒美だ。いいもの、見せてあげよう」
かぷり
耳たぶを甘噛みされて。
俺達だけの顔を上げる合図、なんだ……
彼岸花が揺れている。
微笑んで、そっと……
赤い瞳に俺を捕らえて、俺があなたの中にいる。
「違うね」
声が耳のひだを這う。
「私がお前の中に入るんだよ」
ドキドキ
鼓動が早鐘を打つのは、彼岸花の瞳のせい?
あなたの大きな手のせい?
ドキドキ、ドキドキ
期待している?
あなたの熱、あなたの鼓動、あなたの吐息
全部
「お前のものだ」
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