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第20話

御木本 崇は元夫だ。 我が国では同性婚は認められていない。 しかし法的な効力はないが、自治体独自の政策の一つである同性パートナーシップ制度で籍を入れた。 そして、2年前に籍を抜いた。 俺達は結婚して、離婚したんだ。 『子供が欲しい』 御木本が、そう言ったから。 「覚えている。俺達の別れた理由は」 カードキーをかざす。 解錠の音が鼓膜を刺した。 「お前を愛していた。別れた理由も忘れる訳ない」 「勝手だな」 「男は勝手な生き物だ」 ドアが開く。 「どうした?そこにずっと立っている気か」 交渉の場は、室内だ。 「いえ。失礼いたします。御木本部長」 この男は夫じゃない。 『本社』から来た只の取引先だ。 「独身だ。今もまだ……」 なぜッ 擦れ違い様に、そんな事! 「ワっ」 体が宙に浮いた。 「軽くなったんじゃないか、藍樹」 囚われている。 御木本の腕の中に。 抱っこされて…… 「ちゃんと食べているのか?」 「関係ない!……御木本ッ」 「崇と呼べ。二人きりだ」 「御木本!」 「色気のない」 そんなもの出してたまるかッ 「離せ」 「あぁ、離してやろう。お望み通りに、お姫様」 スプリングが弾んだ。 すぐさまスプリングがきしむ。 熱い体温がのし掛かる。 「お前を抱く。いいな、藍樹」 「なにを、勝手な!」 抵抗を試みるが、頭上で固く握られた手首の枷が外れない。 「勝手な生き物だと教えてやっただろう。男は勝手なんだよ」 雄の力で手首をひとまとめに握られて、押さえつけられる。 「ネクタイは緩めた方がいい」 首もとにかかった手が次の瞬間、肌からシャツを剥がした。 ボタンがシーツに飛ぶ。 「こんなところに……やらしいな」 「やめっ」 胸の小さな実の下に付けられた赤い痕は…… 「キスマーク」 チュウゥゥー 同じ場所を吸われて、チリリッと痛みが走る。 「上書きしたよ」 ………………藍樹 「兄貴の味はどうだった?」

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