23 / 31
第23話
「無駄な抵抗はやめろ……なんて刑事ドラマみたいだな」
腕の中で暴れる俺を捕まえて遊んでいる。
肉食獣が獲物を弄んで食べるように。
「助けは来ない。兄貴は来ない」
御霊おろしを行った。
「お前の買収した旅館に小さな社があったな。あそこに兄貴を封じたよ」
「なに言ってるんだッ」
「言っただろう。兄貴はα、神の力を継ぐ者だ。兄貴の力の根元……始祖の神はあの社の神だ」
御霊おろしとは、神の住まう社を移動させるさいに執り行う儀式だ。
神様が新たな社に住まうため、神の意識を移動させる。
「つまり、神の意識を社に封じるんだよ。兄貴の意識は封じた。もうお前の元には現れない」
元を正して考えろ。
「あの旅館の買収を持ちかけたのは、我が社バルトだ」
「お前は……」
「俺の計画通りだよ。お前の買収した旅館はバルトが管理する。敷地内に仮社を建造した。兄の意識はその中にしまいこんだよ。二度と外には出さない。Ωになったお前は、俺の子を産む」
御木本 崇
お前は……
俺は……
「目的のためなら、どんな手段も厭わない」
お前を嫌いになったんじゃない。
俺の欲望をお前に押し付けようとする、俺自身が嫌いなんだ。
「それでも運命は笑っているんだよ」
お前をΩにした俺の策略は、神をも手玉にとった。
「一度は壊した運命だ。壊れた運命ごとお前を抱く」
お前を愛する。
「なぁ……安っぽい覚悟だろ」
左胸
打ち付ける鼓動に口づけを落とす。
「もう二度と離さない」
ともだちにシェアしよう!