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第23話

「無駄な抵抗はやめろ……なんて刑事ドラマみたいだな」 腕の中で暴れる俺を捕まえて遊んでいる。 肉食獣が獲物を弄んで食べるように。 「助けは来ない。兄貴は来ない」 御霊おろしを行った。 「お前の買収した旅館に小さな社があったな。あそこに兄貴を封じたよ」 「なに言ってるんだッ」 「言っただろう。兄貴はα、神の力を継ぐ者だ。兄貴の力の根元……始祖の神はあの社の神だ」 御霊おろしとは、神の住まう社を移動させるさいに執り行う儀式だ。 神様が新たな社に住まうため、神の意識を移動させる。 「つまり、神の意識を社に封じるんだよ。兄貴の意識は封じた。もうお前の元には現れない」 元を正して考えろ。 「あの旅館の買収を持ちかけたのは、我が社バルトだ」 「お前は……」 「俺の計画通りだよ。お前の買収した旅館はバルトが管理する。敷地内に仮社を建造した。兄の意識はその中にしまいこんだよ。二度と外には出さない。Ωになったお前は、俺の子を産む」 御木本 崇 お前は…… 俺は…… 「目的のためなら、どんな手段も厭わない」 お前を嫌いになったんじゃない。 俺の欲望をお前に押し付けようとする、俺自身が嫌いなんだ。 「それでも運命は笑っているんだよ」 お前をΩにした俺の策略は、神をも手玉にとった。 「一度は壊した運命だ。壊れた運命ごとお前を抱く」 お前を愛する。 「なぁ……安っぽい覚悟だろ」 左胸 打ち付ける鼓動に口づけを落とす。 「もう二度と離さない」

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