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三沢修司(みさわ しゅうじ)1-2

 三沢はそれに少し驚いて小湊の顔をじっと見た。 「それって、その子クイーンにするってこと? 寝取られ趣味? いい趣味してんね。ますます蒼士のこと好きになったよ」 「ハハ……違うよ。奨学生じゃないと、こんな学校なんて入ってくれないでしょ。入学したらパピーにするんだ。まぁ、クイーンっていうのは手札として使えるけどね」 「ますますゲスいなぁ」  三沢は笑うと、食べ終わっていないプリンをスプーンで掬って口に入れた。  パピーとはこの学園にある生徒が作った独自のルールの一つだ。家柄、成績、人望が揃った人間のみが入会できる、紳士クラブの明慶会に所属している者のみが持てる制度である。明慶会の会員はマスターとして、パピーを生徒から選ぶことが出来る。マスターはパピーを守り、勉強を教えたり、時には金銭的援助を行う。  この関係は1対1の関係で、お互い以外のマスターもパピーも持つことが出来ない。どちらかが卒業するまで解消も出来ないのだ。  パピーにするのは、本人の同意の上で行う。マスターがパピーから貰う物は、大体がその肉体だろう。擬似的な恋人として寄り添うことになるのが大抵だが、何をどうするかは二人の間だけで決まるので、勿論そうでない関係もある。  三沢にはこの関係の意味がよく分からなかった。一人の人間とばかり寝なければいけないのも意味が分からない。二人の関係性次第では他の人間と寝ても良いのだろうが、それは大抵がトラブルになるのでやらないという。本当に好きでもない一人の人間と卒業までやらなければいけないのに、わざわざパピーを持ちたがる気持ちがわからないのだが、中等部からこの閉鎖された学園に通っている生徒の多くは、明慶会に憧れ、また、明慶会のメンバーに選ばれるパピーになることを誇りとしているようだ。しかし、高等部から入学した三沢には、その感覚は身についていなかった。  だったらまだクイーンを相手にしていた方が良いと三沢は思う。クイーンはやはり生徒独自のルールであり、奨学生が、いわば娼婦となって生徒達の相手をする制度だ。クイーンになることを断れば、何らかの理由を付けて退学になる。奨学生は大抵が訳ありの生徒なので、ほとんどがその制度を享受するのだ。 「あ、そっか。蒼士ちゃん、やっぱり賢い!」  三沢は急に思いついたように立ち上がった。 「そうだよね。この学校に入れれば良いんだよね。どうすれば奨学生になれるの?」 「え?」     

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