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綿貫碧(わたぬき あおい)1-3
要因はわかっている。それは女と間違えられるような容姿だからだ。160センチちょっとしかない身長に、色白の肌。くせっ毛は染めていないのに茶色で、目はぱっちりと大きい。まるでフランス人形のようであると言われており、何も知らないあどけない少年のような容貌が、女とも違う魅力だと言われていた。そのアンバランスさが男を引き込むのだ、と言われたこともある。
馬鹿馬鹿しい。何も知らないどころか、男性経験は十二歳の頃に、女性とは十三歳の頃に終えている。そこらのビッチにも引けを取らない自信がある。もっとも、どれも望んで行った事では無いのだが。
「じゃあ、練習は無しって事で良い?」
「いいですよ、別に。でも、割に合わないですよね。週に三回くらい、男を取るんでしょ。外の世界なら、一回三万だとして、12回なら三十六万だ。これだけあれば、高校に行って、生活費だって出せる。割に合いません」
「でも、外の世界でウリをしたら、病気の心配もあるし、部屋借りるのだって未成年じゃ難しい。掴まるリスクも高いし、下手したら殺されるよ」
三沢は実に冷静で合理的な男だと感じた。感情的な男よりもいいのだが、どこか得体の知れない恐ろしさがあると綿貫は思う。
綿貫は人の本質を見るのが上手かった。それは親に見捨てられ、施設で育ったために、どうやれば上手く生きられるか考えてきたからであろう。しかし、その割に、思ったように上手くは生きてはいなかった。元来の気の強さが、どうしても理性に勝ってしまう時がある。
可愛らしいといわれている容姿を武器に、いくらでも利益を得ることも出来るのだろうが、そこまで割り切ることも出来ないのが実情だ。まったくプライドとはやっかいだと綿貫自身思っていたが、しかし十代半ばの少年がそれを操れるほど、生き方に長けているわけもなかった。
「じゃあ、早速公開するよ」
三沢がスマートフォンの画面を見せてきた。三沢はその画面の上部にある1325という数字を指さした。
「これ、あおちゃんの番号ね」
1年3組25番ということだろう。名前で無いのがいやらしい所だ。
「公開したら、全校生徒が予約できるんだ。月水金の週三回だね。寮にある一回のヤリ部屋があおちゃん専用に割り当てられるから、夜九時になったら、そこに行くこと。いいね」
そう言って、三沢は公開をタップした。
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