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綿貫碧(わたぬき あおい)2-21
「わかりましたよぉ。後で残りの金出しますから早くしゃぶって」
豚はそう言って、すでに勃ち上がっているペニスを綿貫の顔の前に突き出してきた。
綿貫は心の中で悪態をついた。それは豚に対してと自分に対してだ。
綿貫は昔、体を売ったら最後だと、施設にいた年上の女の子に聞いたことがあった。それをしたら、戻れなくなるよ。苦労して金を手に入れようと思わなくなる。減るものじゃ無いという子もいるけど、そんなわけはない。確実に、自分が減っていくから絶対にしないで。彼女はそう言った。
それを聞いた綿貫はもっともだと思った。何よりも、金で体を売るなどプライドがなさ過ぎる。蹂躙され続けた綿貫には、売春をしたことがないという事が、自身が汚れていないと思い込むための、最後の砦であった。金を貰った事のないという事実だけが自身のプライドを支えていた。
それが今、崩れていく。こんな豚を相手に、最後の矜恃が崩れ去っていくのだ。惨めに生きてきた自分らしいと、知らず笑っていた。
「そんなに嬉しいんですか。ビッチですね」
豚がずれたメガネを、くいっとあげる。豚がメガネをしていると思って、綿貫は更に笑った。
フェラをして、突っ込まれて、長い苦痛の時間が終わると、綿貫はすぐに風呂場に向かった。
浴場に入ると、高月が体を洗っている。綿貫は高月の目の前に置かれているイソジンを指さした。
「それ、借りても良いですか」
高月は綿貫の顔を見て驚いた顔をした後、いつもと同じように笑った。
「いくら貰えた?」
イソジンを差し出しながら、高月が聞いてくる。
「5千円」
「は? フェラしたんじゃねぇの?」
「したけど、ゴムつきだったのと、下手くそだからって結局値切られた。一万円の約束だったのに」
「一万円でも安いよ。誰だ、そのふざけた相手」
高月は憤慨した顔をすると、少し声を荒げた。
「知らないです。上級生だと思うけど、太ってメガネかけてた」
「あとで予約確認して、そいつの名前、仲間内に流しておく。もうそいつフェラどころか、お触り一つしてもらえないから」
なるほど。クイーン同士の繋がりはこういう時に役に立つのだと思った。金を貰えなかったとは明慶会には言えないから、仲間内で情報を流して制裁をするしかない。中々、クイーンもしたたかだ。女王と言っていた意味が分かる気がした。
「フェラ下手くそなの? 教えてやろうか」
「いや、いいです。もうしないから」
綿貫碧(わたぬき あおい)2-21
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