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綿貫碧(わたぬき あおい)3-4
三沢はタブレットを操作した後、どこかに電話をかけて出前の注文をした。その様子が様になっている。やはり三沢は、自分などと違って持ってる人なんだなと思った。
「もしかして、緊張してる?」
電話を切った三沢が、綿貫の隣に座って聞いてくる。
「はい。こんな豪華な場所、初めてで……」
リビングに置かれたソファはコの字で置かれており、座り心地がいい。リビングから続くダイニングにはお洒落なテーブルがあり、そこには綺麗な花が花瓶に入っておかれていた。キッチンは白とシルバーで統一されており、お洒落で広い。しかし、どこか生活感が無かった。
「テレビでも見る? 寮でも施設でも好きなテレビなんて見れなかったよね」
三沢はそう言うと、リビングに置かれている大きなテレビをつけた。
「うわー、画面綺麗」
「そう? 俺はテレビ見ないから、よくわからないけど」
「見ないのに、あるんですか」
「そう。お客さん用にね、この間買ったんだ」
贅沢だなと思いながら、綿貫はテレビをじっと見つめた。
「この時間じゃ面白い番組、ないのかな。何か映画でも見る?」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ音楽でも聴こうか」
三沢はテレビを切ると、今度は別のリモコンを操作した。天井に備え付けられたスピーカーから音楽が流れてくる。誰の曲かは分からなかったが、雰囲気の良い曲であった。
流れてくる音楽は主張しすぎるわけでもなく、しかし退屈すぎることもない。こんな音楽が流れた豪華な空間で、見惚れるような男が隣に座ったら誰でも落ちるのでは無いかと思った。きっと三沢は、この部屋に誰かを連れこみ、セックスをしているのだろう。綿貫はそんな下卑たことを思いながら、ぼうっと消えたままのテレビの画面を見ていた。
しばらくそうしていると、眠気が訪れた。最近あまり眠れていないせいだろう。ウトウトしてきた綿貫を見て、三沢が笑った。
「眠れるくらいなら、緊張も大したことないね。ちょっと寝なよ」
そう言って綿貫の体を半ば強引にソファに横たえた三沢は、綿貫の頭を撫でてくれた。気持ちが良い。こんな風に頭を撫でてくれたのはしゅうちゃんだけだ。この手はしゅうちゃんに似ているとまた思いながら、すぐに眠りに落ちていった。
次に目を覚ますと、良い匂いがした。ゆっくりと起き上がると、三沢がにっこりと笑う。
「ご飯、来たよ。食べる? それとももう少し眠る?」
「起きます」
ダイニングテーブルにつくと、そこにはお寿司だけではなく、餃子や回鍋肉や炒飯、パエリアやピザやサンドイッチ、そしてお洒落なオードブルが並んでいる。
「凄い」
「これだけあれば、何か食べれるよね」
三沢の言葉に、綿貫は苦笑する。今更どうこう言っても遅いのだが、こういうのは困ると思った。もっとも金持ちには大したことは無いのだろう。
「食べきれませんよ。勿体ない」
「夜と、明日食べれば良いよ」
「明日……?」
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