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綿貫碧(わたぬき あおい)3-18
しかし、言えなかった。三沢の目の奥に潜む光に気がつき、それを言う事が出来なかったのだ。
三沢の目に、這い上がれない深い沼に引きずり込まれるような、真綿で優しく柔らかに、体中を締め付けられるような、そんな感覚を覚えた。それは恐怖に近い悦楽で、綿貫は先に進むのを躊躇した。
「あ、俺、やっぱり帰ります。変な事言ってごめんなさい」
そう言って綿貫は立ち上がるが、しかし、強い力で手首を掴まれ、それを阻止される。
「帰ってどうするの。お金、ないでしょ」
「帰るだけの金はあります。なくても、何とでもなります」
「また、体を売るの?」
綿貫はそれに、首を振った。
「分かりません。でも、何とかなる」
「ならないよ。もう、仲直りしよう。俺が変な事言ったからだね。ごめんね。でも、俺、あおちゃんが大事なんだ。クイーンもやって欲しくない」
また甘い言葉だ。しかし綿貫は、今度はそれに流されなかった。これ以上、ここにいたら駄目だ。この男といれば、好きだとか、そんな甘い物では済まされない。これ以上三沢に関われば、もっともっと深く、想像もつかないような甘苦の世界に沈むだろう。これ以上この男といたら、確実に戻れなくなると思った。
「帰ります。今度こそ、本当に帰ります。離してください」
「そう」
三沢の低い声が響き、手を離された。綿貫がほっとした瞬間、三沢が立ち上がり、綿貫の頭上から何かをばらまいた。
「え?」
ゆっくりとそれは床に落ちていく。それは1万円のお札だった。
「じゃあ、せめてお金上げる」
「貰えません」
上から見下ろしてくる傲慢な目に、綿貫はふざけるなと思って拒絶をした。
「勿論タダじゃ上げないよ」
そう言って三沢は綿貫の体を強く押して、床に座らせた。
「舐めてよ」
三沢がズボンの前をはだけさせると、下着を少しずらして、自分のペニスを取り出した。それに綿貫は、ゴクリと唾を飲み込む。
「クイーンは、嫌なんですよね」
「気が変わった。デブのチンコをしゃぶったんだから、俺のもしゃぶれるよね」
何故あの豚がデブだと知っているのだと思いながら、綿貫は首を振った。
「三沢さんのは、嫌です」
「何で。さっき、やらせてくれるって言っただろ。いいよ、舐めるだけで」
そう言って三沢は、綿貫の髪の毛をぐいっと掴むと、自分の股間に綿貫の顔を押しつけた。
「ゴム臭くてごめんね。でも、生ではやってないし、生でしゃぶらせてもないから。病気が怖いし汚いからね、フェラもゴム無しでさせないんだ。でも、あおちゃんは別」
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