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綿貫碧(わたぬき あおい)4-16
「何を」
「俺達のルール」
そう言って三沢は紙とペンをテーブルに置いて、その紙に何かを書き始めた。
「パピーになるんだったら、これだけは守って欲しいな。まず、俺以外とは寝ない」
「はい」
「フェラもキスも駄目だよ。不必要に誰かに触るのも、触られるのも駄目」
「何ですか、それ」
「本当ならさ、俺以外と話しちゃ駄目、ってしたいけど、それはさすがに無理でしょ。だから譲歩してるんだよ」
「三沢さん、束縛系ですか。ちょっと引きます」
「そう?」
三沢は平然と言いながら、次の条件を書いていった。
「寝る時は、毎日俺の部屋で寝てね」
「は?」
「大丈夫、平日はしないから。でも、週末は、必ず、いっぱいエッチしようね。あ、そうだね、週末は一緒に過ごす、も足そうね」
「いや、あのベッドで二人で? 狭いし、無理でしょ。それに、言ってる事、ちょっとキモいんですけど」
「酷いなぁ」
全く酷いと思っていない様子で、ヘラリと三沢は笑った。
「布団買おうね。床で寝れば大丈夫」
「そうですか……」
「じゃあ次ね。セックスの時、ゴムは着けない」
「はい?」
「俺、今まで生でなんてしたことないのに、あおちゃんは今まで、散々中出しされたんだよね。ずるいよね。だから、駄目とは言わせないよ」
ニッコリと笑う三沢に、何考えてんだこの人、と三沢に対して考えても仕方が無いことを思ったが、結局頷くことしか出来なかった。
「こんなもんかな。俺はね、何でもして上げる。ご飯も、服も、欲しいものも、何でも買ってあげる。沢山、援助してあげるから。あと、困った時は、必ず言ってね。何かされた時も言って。絶対何とかしてあげる」
「あ、ありがとうございます」
それだけか。いや、十分過ぎるのだが、綿貫は少し落胆をした。三沢が言った中には、自分に対して提示した一つ目のルール、他人と寝ないことというのがなかった。
当たり前か。パピーは所詮愛人だ。ペットから愛人に昇格しただけでもありがたい。これ以上望むのは、贅沢過ぎると思って、コクリと頷いた。
「じゃあ、空けようか。どっちの耳が良い?」
「どっちでも」
「じゃあ、右にしようか」
三沢はそう言うと、ピアスの消毒と、綿貫の耳を消毒し、空ける位置にマーキングをした。ニードルを袋から出すと軟膏を塗り、綿貫の耳に刺してくる。思ったよりも痛くはないが、最後、ピアスを耳に装着する時は痛んだ。血もボタボタと垂れており、血が苦手な綿貫は、三沢が血を拭くまで目を閉じて耐えた。
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