75 / 133

綿貫碧(わたぬき あおい)5-1

 綿貫は目を覚ますと、目の前の男の顔に心臓がドクリとなった。  もういい加減慣れてもよい頃だと思ったが、未だに慣れない。起きて、隣に好きな男がいるのだ。幸せだと思う以上に、心臓に悪い。 「おはよう」  三沢がちゅっとキスをしてくる。それに、顔を赤くして、おはようございますと答えた。  三沢の寮の部屋は広い。テレビやソファなど余計な物も置かれていない。ただ、大きな本棚があったが、三沢はその中身を自宅に送り、本棚を処分した。  そして空いた空間に、二人分の布団を敷いている。てっきり、自分が布団で、三沢がベッドで寝るのかと思っていたが、三沢は布団で綿貫と並んで寝ている。いや、くっついて寝ている。もう、毎日幸せで、毎日心臓に悪い。  綿貫は起き上がって顔を洗うと、制服に着替えた。三沢は後ろから、綿貫の髪の毛にワックスを塗ってきた。綿貫の髪の毛は癖毛であるため、あちらこちらに跳ね上がる。幸いなことに、髪質は乾燥していないために爆発まではいかないが、放っておけば中々に凄いこととなる。今まではそれでも放置していたが、最近では三沢が楽しそうに髪の毛を整えるようになった。やはり自分はペットだな、と思った。 「腹減った。ご飯、行きましょうよ」  綿貫が言うと、三沢が後ろからぎゅっと腹に手を回してきて、耳元で囁いてきた。 「ようやく土曜日だね。授業終わったら、ロータリーに集合だよ。いいね」  今日で五回目のセックスをする。三沢とのセックスは最高に気持ちが良かったが、あんな快楽を知ってしまったら、もう引き返せないと思う。最近では少しアブノーマルになっているセックスに、自分は三沢以外で満足など出来なくなるのではないかという不安もあった。  それでも、それに綿貫は頷く。軽く、勃起をした。  朝食を食べ終わり、学校に向かうために外に出ると、三沢が綿貫の手を握ってくる。三沢は人の目を気にする神経を持ち合わせていないので、周りの視線など全く意に介さない。綿貫も、それを払うだけの気力は無かった。  しかし、それでも綿貫はこの行為が好きなわけではない。いや、好きなのだが、周りの視線が気になる。  周りにも、手を繋いでる生徒は沢山いるのだが、それでも、三沢と綿貫を見る視線は多い。それは、三沢が学園のトップ2であることと、そんな三沢が、初めてパピーを持ったからであろう。          

ともだちにシェアしよう!