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綿貫碧(わたぬき あおい)6-7

***    三沢は、夏休みになってから毎日のように運転免許をとるために教習所に通っている。大概が午前中に行くので、お昼まで綿貫は一人で過ごしていた。  綿貫は一人で待っていても暇なので、時間が自由に使えるポスティングのバイトを始めていた。もっともそれを三沢に言えば反対されるのが目に見えており、また、三沢の誕生日にプレゼントを上げたいというのもあったので、内緒で行っていた。  手元にあるお金は2万円。三沢がいない隙を縫ってのバイトであったため、思った以上に稼げなかったが、これだけあれば三沢の好きなケーキと、プレゼントが買える。何を買おうかと、綿貫はワクワクとしながら、一人で街をブラブラとした。  しかし、三沢の欲しいものが想像つかない。高い物が欲しいわけではないと三沢は言っていたが、それでも変な物は身につけないだろうし、使わないだろう。ずっと一緒にいながらも、三沢の好きな物をほとんど知らないと思ったが、三沢の話を聞きたいと言っても、いつも話をそらされてしまうのだ。仕方が無い。  雑貨屋に入ると、店の中をゆっくりと見てまわった。こういうお店には、三沢と何回か来たが、色んな物があって面白い。三沢は商品をじっくりと見るタイプではなく、欲しいものを見つけたら、さっさと買ってしまうので、こんなにゆっくり見た事はない。可愛い雑貨を見て顔が緩むのに、性格まで女みたいだなと、自分の事ながら思った。  キーホルダーに整髪料、財布やペンケース、見て回るがどれもピンとこない。結局、ベタだと思いながらスマホケースを、二つ、色違いで買った。三沢とお揃いにするつもりだ。  スマートフォンは連絡用として三沢に買って貰っていた。もっとも、連絡先は三沢のみ。その上毎日スマートフォンの中身をチェックされるという束縛ぶりだ。それに呆れながらも、そんなところも三沢らしいと思っている自分も末期だ。  買ったスマホケースを手に持ち、三沢が好きだという店で、予約していたケーキを受け取り、家に帰った。  まだ三沢は帰っていない。ほっとしながらケーキを冷蔵庫に入れて、三沢が帰って来るのを待った。 「ただいま」  三沢が帰ってきたのに、玄関まで出迎えに行くと、三沢がぎゅっと綿貫の体を抱きしめて、キスをしてきた。 「お帰りなさい」  汗をかいているのに、三沢の体からは良い匂いがする。着けている香水が気化して、いつもよりも更に匂い立っているのにうっとりとした。 「今日は何してたの?」  シャワーを浴びて出てきた三沢が、髪を拭きながら聞いてくる。毎日聞いてくるのに、綿貫もいつもと同じ答えを返した。 「テレビ見て、散歩行ってきた」          

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