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綿貫碧(わたぬき あおい)6-11
夜に何かするつもりらしいので、そのためにとって置いているのだろうか。今までだって綿貫の想像を超えるような事をされてきたのに、あれ以上何をされるのだろうかと考えると、不安と期待で胸が高鳴った。
「そろそろ、行こうか?」
時間が18時になると、時計を見て三沢が言った。
「どこに?」
「ホテル」
三沢は綿貫の手を握って外に出ると、タクシーに乗って行き先を告げた。
タクシーが1軒のホテルの前で止まると、三沢はタクシーから降りて、綿貫を連れてホテルの中に入っていく。
フロントは綺麗な花が飾られ、内装も綺麗でお洒落だ。高そうなホテルであり、なぜわざわざホテルなのかと思ったが、三沢は何も言わずにチェックインをして、エレベーターに乗った。
連れて行かれた部屋は豪華な内装の部屋であった。スイートルームというやつだろうか。リビングと寝室が別れており、広く、ゆったりとしている。ホテルなど、修学旅行以外で泊まった事はないが、普通の部屋とは違うと言う事くらいはわかった。
三沢のマンションだって十分過ぎるくらいに贅沢なのに、旅行でもないのにわざわざホテルだなんて、どういうつもりだろうか。誕生日くらい贅沢したかったのか。綿貫はそんな事を考えながら、落ち着かない気分で部屋の中を見渡した。
「座って、リラックスしたら」
ソファに座る三沢の言葉に頷くと、綿貫は三沢の隣に座った。それと同時に、呼び鈴の音が響く。
「え?」
ホテルの従業員が来たのかと思い、三沢の顔を見ると、三沢はニコリと笑ってドアを開けに行った。
「こんばんは。マッサージのご依頼されましたか」
「うん」
「フユです。よろしくお願いします」
落ち着いた、しかし若々しい男の声が聞こえた。綿貫は立ち上がると、フユと名乗った男の顔を見た。
綿貫はフユの顔にゴクリと唾を飲み込む。何て綺麗な人なのだろうかと思った。いや、綺麗と言うよりも可愛いと言うべきか。女の子なんかよりも余程可愛いが、どこか艶っぽい。背はすらりと高いが、高すぎる訳ではない。
綿貫は心のどこかで、中性的な自分の顔を可愛いと思っていたが、フユはそんな自分の考えが恥ずかしくなるくらいに可愛らしく綺麗であった。
「じゃあ、始めよっか。フユ君、シャワー浴びてきて」
「はい」
フユが素直に頷きシャワーを浴びに行くと、綿貫は三沢に詰め寄った。
「誰ですか、あの人。もしかして買ったんですか?」
「買っただなんてやめてよ。ちゃんとしたデートクラブの子だよ。そこら辺の変な子と一緒にしないで」
「何言ってんですか! ウリなんて嫌いだって言ってたじゃないですか」
「そうだっけ? でも、あんなに可愛い子ならいいんじゃない」
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