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綿貫碧(わたぬき あおい)7-4

 突然話題を変えた三沢に、綿貫はごくりと唾を飲み込み、首を振った。 「で、でも、俺、脱走とかじゃなくて、学校やめるつもりで」 「そう。でも、まだやめてないよね」  三沢が優しく綿貫の首元に触れてくると、べろりと舐めてきた。 「逃がさないよ。逃げても無駄だ。絶対に逃がさない。地獄の底まででも追ってやる」 「檻の中ですね」  綿貫がそう言って諦めたように笑うと、三沢は一瞬表情をなくした。 「そんな顔、初めて見たよ」  どんな顔だと思ったが、三沢はそれ以上は何も言わずに綿貫の顔を撫で後頭部をがしりと掴むと、噛みつくように喉笛に食らいついてきた。強く吸い上げてきて歯を立てられる。食いちぎられるかと身を竦ませたが、三沢はすぐに綿貫を解放した。 「分かってるんだよ。俺が悪いって事なんてね。でもね、止まらないんだ。どうやって手に入れようか考えれば考えるほど、頭がグルグルしちゃう。簡単な問題で、簡単に解けるはずなのにね、何故か解く事が出来ないんだよ。あおちゃんが何かやるたびに、あおちゃんが何か話すたびに回路がどんどん複雑になってきちゃう。簡単に解いたら、簡単に逃げられちゃうんじゃないかって思って、余計な事ばかりしちゃうんだ」  三沢は綿貫の服を脱がして裸にすると、手首をベッドの鎖に固定した。ひやりとした皮の感触を感じながら、縛られるのは久しぶりだと思った。  だからこの別荘には来たくなかった。綿貫は快楽を待ち望みながらも、一方ではただ抱き合うだけでも十分だと思っている。その方が三沢を感じられるし、一時でも愛情を感じる事が出来る。  しかしここでは、何もかも奪われ、ただ溺れるだけだ。底のない穴に落ちていく恐怖と悦楽に、ただただ一つの肉になるしかないのだ。 「今日は、初めてのこと、しようか。お仕置きに備えないといけないしね」 「お仕置きって?」  不穏な言葉に綿貫は眉根を寄せる。声が少し震えた。     

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