110 / 133
綿貫碧(わたぬき あおい)7-11
三沢が腰を綿貫の尻にぐっと押しつけてきた。深く抉られ、腰が蕩けてしまうのでは無いかと思った。
深い絶頂の後には、立て続けに細かな絶頂に襲われ、全身を痙攣させながら、ペニスの先端からぶしゅっと激しく精液をまき散らした。
「あぁ……あっ、あっ、あっ、イク、イッてる……イッてる、あぁっ!」
「何回もイッてるね。やらしい体。もっとイキ狂いなよ」
「きもちい……きもちいぃ……三沢さんは? 三沢さんは?」
閉じた目をうっすらと開けて三沢の顔を見ると、三沢の顔も快楽に蕩けていた。
「気持ちいよ。最高だ」
綿貫は三沢の首に手を回すと、自分の方に抱き寄せた。
「フユよりも?」
「勿論」
「女の子よりも?」
何を聞いているのだと頭のどこかで思ったが、それでも聞かずにはいられなかった。この顔を見る事が出来るのは、自分だけだと思いたかった。馬鹿みたいだ。快楽に流され、現実に戻る手段など捨て去れば良いのに、何を聞いているのだと思う。
いや、こんな時だから聞けるのだ。正気ではないからこそ、聞く事が出来る。しかしそれでも、返って来る返事が怖かった。
「気持ちいいよ。誰よりも気持ちいい。あおちゃんみたいな子、他のどこにもいない。あおちゃんが一番だ」
「本当に?」
「本当に。信じて……」
「じゃあ、俺の事、好き?」
あぁ、馬鹿だ。背筋を駆け巡る快楽に、頭まで痺れてまともな思考が出来なくなっている。しかし、今その言葉を聞けたら死んでも良いとも思った。
「やめてよ」
吐息の下から吐き出された言葉に、綿貫は現実に引き戻される。
「そんな下らない言葉、俺に言わせないで」
三沢はそう言うと、綿貫の手を首から解いて上半身を離し、綿貫の足を限界まで広げた。
「イク……出すよ」
三沢は腰の動きを速め、激しく深くえぐってくる。綿貫は、聞かなければ良かったと思い、興奮した心が冷めていくのを感じたが、それとは裏腹に、体は追い詰められていく。こんな体など壊れてしまえばいいと嫌悪しながら、快楽をただ受け止めていた。
「でも、俺は、好き。三沢さんが好き。俺には三沢さんだけだ。好き、好き……」
言わずにはいられなかった。傷ついた心を埋めるように、口にしてはいけない言葉を吐き出していた。今までずっと閉じ込めていた言葉を初めて口にした綿貫は、もうどうなってもいいと思って目を瞑る。
三沢の精液が体内の奥深くにほとばしる。それに、綿貫も絶頂を迎えた瞬間、三沢が綿貫の足から手を離し、強く体を抱きしめてきた。
何故か三沢の体が震えている。綿貫が目を開けると一瞬だけ三沢の顔が見えたが、三沢が綿貫の目を手で覆ってしまったため、もう見ることは出来なかった。
そのまま三沢がキスをしてくる。優しく慈しむようなキスだが、どこか物悲しかった。
「そんな顔、初めて見ました。子どもみたいだ……」
綿貫の呟いた声はかすれ、とても小さく、三沢には届いていないだろう。いや、届いていないで欲しい。
それは、およそ三沢らしくない表情だった。見ない方が良かった。そんな、子どもが泣くような顔、三沢らしくない。
綿貫はそう思いながら、三沢のキスをただ受け止めた。
ともだちにシェアしよう!