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綿貫碧(わたぬき あおい)8-5
「三沢さん、あんた一体、誰なんですか……」
三沢が綿貫の問いに答える前に、スマートフォンの着信音が鳴り響いた。三沢のスマートフォンだ。電話がくるのは珍しい。三沢は枕元に置いているスマートフォンを手に取ると、画面を見た後、電話に出た。
「どうしたの? うん、今、別荘。そう……」
親しい相手なのだろう。三沢は楽しそうに話している。
「あぁ、そう。わかった。じゃあ、俺が会員に連絡しとくよ……鍵は開けとくから勝手に入って」
それだけ言うと、三沢はスマートフォンを枕元に戻した。
「凄いタイミング。ようやく、あおちゃんを壊せるのかなぁ。俺のやり方、間違ってたなら、壊して、最初からやり直せば良いよね」
三沢の目に、仄暗く冷たい炎が見える。もう沼の底まで堕ちているというのに、更にもっと深く堕ちていくような感覚を覚えた。
「さぁ、パーティーを始めようか」
三沢が差し出す手を、綿貫は震える手で握った。
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