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綿貫碧(わたぬき あおい)8-17
「どうなんでしょうね。でも、俺は寂しいです。正直、三沢さんといても寂しかった。でも、これからは寂しくならないようにしてくれるんですよね」
三沢はそれに、綿貫の頭を撫で、額にキスをしてくれた。
「そっか。俺は、寂しくて愛に飢えてたんだね。そうかもしれない。多分、生まれた時からずっと、そうだったんだ。そんな時にさ、ふわふわの綿菓子を口にしちゃったんだよね。その甘さにメロメロになっちゃった。初めて口にした甘くて、可愛らしくて、純粋で、俺だけを信じて俺だけを見てくる目に、ぜーんぶ持ってかれちゃって、俺の寂しさを埋められるのは、それだけになっちゃった。俺、そう考えると、結構悲惨だよね」
「何言ってんの? また分からない事言ってる。いつの話?」
「6歳のときだよ」
「何それ。信じろって言ってるそばからそれ? 俺はその子の代用品ってこと?」
「あぁ、違うよ。そういうわけじゃない。不安にさせちゃったね。ごめんね」
三沢がもう一度、キスをしてくる。それに綿貫は、余計な事は考えるなと己に言い聞かせた。
「そうそう、甲野君ね、結局輪姦 されたらしいよ。それでもパピーにならなかったんだって」
「……そっか」
底抜けに馬鹿な奴だと綿貫は思った。自分なんかよりも馬鹿だが、底抜けに強くもある。
「隣の部屋にいるよ。いいよ、行ってきて。俺達は明日、ここを出よう。長く休んじゃったから、月曜日からまた学校に行かないと」
「わかりました。シャワー、浴びていいですか」
ゆっくり起き上がると、体中がきしんで痛んだ。
「色々とやってくれましたね。体中痛い」
三沢は先ほど吐き出された三沢の精液を拭くと、綿貫を抱き上げ、浴室まで連れて行ってくれた。
髪と体を洗い、温かい風呂にゆっくりと浸かると、ほっとしてくる。このままずっとここにいたいと思ったが、甲野の事も気になるので無理矢理に浴室から出た。
そのままの足で、甲野がいる部屋に向かう。ノックをすると、ドアが開いて小湊が顔を出した。
小湊が体をどかしたので、綿貫は甲野のいるベッドまで歩いて行った。甲野が綿貫の顔を見ると、起き上がろうとする。それを慌てて制止した。
「大丈夫? あ、いいよ、そのままで」
綿貫はそう言ってベッドサイドに座った。
「そうちゃん、綿貫と2人にして」
小湊は綿貫の言葉にじっとこちらを見てくるが、自分などはその瞳には映っておらず、甲野しか見ていないことはわかっていた。
不安そうに揺れる瞳は、失う事を恐れている子どものようだ。それは、先日三沢が見せた瞳の色と似ていた。
「変な話はしないよ。被害者2人で話をするくらいいいだろ」
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