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綿貫碧(わたぬき あおい)8-19

「余計な話ししちゃったな。顔見にきただけなんだけど、元気そうで良かった。俺たちは明日までいるけど、多分顔はあわせないと思う。三沢さん俺を離さないだろうし、小湊先輩も、どうせ離してくれないだろ。三沢さんも大概だけど、小湊先輩も大概だよな。お互い、頑張ろうな」  それに甲野が静かに笑う。そういえば、入学当時は天真爛漫な笑顔を浮かべていたが、最近ではどこか寂しそうな笑いしか浮かべていない。小湊のせいだろう。あの爽やかに笑っている顔を、殴ってやりたいと思った。  部屋に戻ると、三沢が待っていましたとばかりに、綿貫の体を抱きしめてきた。それにほっとする。 「甲野君、どうだった」 「思ったよりも元気だった。ホントにタフだよ。呆れる」 「じゃあもう、甲野君の事考えるのはお終いね。明日までゆっくり休んで。何でもして上げるから、言ってね」 「はい」  三沢は綿貫の体をひょいっと持ち上げると、ベッドに横にしてくれた。 「三沢さん……」 「なに?」 「好きです」  三沢はそれに、子どもが泣くような顔で、笑った。

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