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第9話

颯の家に戻り部屋に入ると颯はまだ眠っていた… 「颯…俺じゃダメ?俺にしておけばいいのに…」 眠っている颯に囁きかける。勿論颯が目を覚ますことはない。 そっとその薄い唇に唇を重ねる。 「好きだよ…颯…何で…俺じゃないの?あいつなんか…やめて俺にしてよ…」 そのまま俺も泣き疲れて颯の手を握ったまま眠っていた 「…ら…ほむら…焔」 「ん…あ…ごめん…寝てた」 「ずっとここにいてくれたのですか?」 「あぁ…ダメだったか?」 「いいえ…ありがとうございます…」 「今…何時?」 「もう七時ですね。すいません。あんなみっともないところを見せてしまって」 「別に構わねぇよ」 「焔?貴方…泣いたのですか?目が赤いです。少し腫れてるような…」 「変な体勢で寝てたからだろ。大丈夫か?颯…」 「えぇ…泣いて…スッキリしました…そうですよね…こんな子供に大人なあの人が本気になるはずはなかったのです…もう…大丈夫…まだ胸は痛いけれど…これも…きっと直ぐに癒えるのでしょう…側にいてくれてありがとうございます。貴方だけです…こんなみっともない僕を見せられるのも…これからもずっと良き友でいてくださいね」 無理矢理に笑った颯…そう…俺はやっぱり友人以上にはなれないのだ…わかっていたのに…こんなにも痛い…それを颯に悟られないよういつものように振る舞った 「颯!焔くん。ご飯できたわよ」 いつのまにか帰宅していた颯の母親に呼ばれる。 「はい。今行きます。さぁ。行きましょ?焔」 「今日は母さんが作りおきしてくれてるから俺は帰る」 「帰ってしまうのですか?」 「あぁ…」 今日はまともに颯と話せそうにない…颯の顔を見ていたらまた泣いてしまいそう… 今日も俺の両親の帰りは遅い… 少し一人になりたいんだ…

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