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第15話

翌日早朝。ドタドタという大きな足音が聞こえ目が覚めた。 「何だ?…」 ベッドから降りると部屋の扉がノックされた 「どうぞ」 「おはよー!!」 勢いよく入ってきたのは息を切らした颯の父である頼さんだった。上質のスーツに身を包んだスラリとした長身。とても美しい顔をしている。その人が額に汗しながら走り込んできたのだ。 「颯くんが落ち込んでるって聞いて…」 自分まで泣きそうな顔して心配そうにまだベッドで眠る颯の傍に行き顔を覗き込む 「颯。まだ寝てますよ」 「颯くん…颯くーん」 まだ寝てる颯を優しく揺すりながら声を掛ける。颯がゆっくりと白雪姫みたいに目を覚ました 「んん…父さん?どうしたの?」 「颯くん。大丈夫なの?」 「…わざわざ帰ってきたの?ありがとう。大丈夫だよ。焔がいてくれたから」 「そうか…よかった…」 やっと息をつけたのかへなへなと床にしゃがみ込む頼さん 「ありがとう。焔くん」 頼さんは俺の方を向くと誰もが目を奪われるような笑顔を向けてくれた。俺は見慣れてるからいいけど知らない人が見たら腰が砕けてしまうような表情だ。けどこの人がこんなに綺麗な自然な笑顔を向けるのは家族の前や俺達の家族の前だけだ。普段は颯と同じであまり表情は変えないから冷たい人とか怖い人見られてしまうことも多い。 「いえ。俺は何も」 「もうさ!焔くんうちにお婿においでよぉ!!颯くんを任せられるのは焔くんだけだよ!ね?ね?いいでしょ?」 そしてこんなふうに子供みたいに駄々をこねる姿も誰も知らないだろう。 「父さん…焔に迷惑かけないでよ。焔みたいないい男がうちに婿に来て良い訳ないでしょ?」 「だってぇ…颯くん…」 俺はいいけどお前がダメなんだろ?…本人から言われるとやっぱり堪えるんだ 「うう…焔くーん」 「俺よりいい人、颯なら沢山いますよ。頼さん。心配しなくていいですよ。どんな形でも俺は颯の側にいますから安心してください」 「やぁだぁ!!焔くんがいいよ」 「わがまま言わないで」 「颯。焔くんを選んでよ」 「意味がわからないんだけど。焔を求めている人は沢山いるの。わかるでしょ」 「…もう大丈夫そうだね…良かった…颯くん。いつも通りだ。ねぇ颯くん。君はもっと周りを良く見るといいと思うよ」 「言われなくてもわかってる。仕事は?大丈夫なの?」 「あぁ!!戻らなきゃ!!リアちゃんに会って帰るから!颯くん!またね。ちゃんと電話でてね!!」 「わかってるよ。忙しいのにありがとう。愛してるよ。父さん」 「うん!僕も愛してるよ!じゃあね」 「相変わらず嵐みたいな人だね」 「そうですね。でもそういうあの人は嫌いじゃないです」 「俺も頼さん好きだよ。楽しいよね」 俺の親も颯の親も俺の気持ちを知ってる。知らぬは本人ばかりなり… でも家族に認められていても…本人が友人でいて欲しいならそれに俺は従うだけだ…

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