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第17話
「はい!お待たせ」
「うわぁ!!」
テーブルに置かれたケーキを見るとさっきまで不機嫌そうにしていたのにきらきらの笑顔を見せる颯に顔も綻ぶ。
「綺麗だねぇ!これ!」
「だろ?」
「食べる!いただきます」
本当に…甘いもの目にして食べてるときは年相応の可愛らしさになるんだから堪らない
「焔はこっちね。好きだろ?これ」
「うん!ありがとう」
俺は少し甘味を押さえたモンブラン。昔からおじさんの作るモンブランが好きだった
昨日のも勿論だけどやっぱり俺はおじさんのが好きだな
「…」
視線を感じて顔をあげると颯がジーッとこちらを見てた
「ははっ!何?食べたいの?」
「…そんな訳じゃ…」
「ほら。あーん」
フォークに刺して颯に差し出す。無意識だった
「いいの?」
「うん。いいよ。ほら食べな」
そういうと颯はにこっと笑って小さな口でパクリと食べて口端についたクリームをペロリと舐めた。
「美味しいね!!」
「っ…えろ…」
「え?何?」
「何でもない」
次の一口を食べようとしたときふと気付く。これ…間接キスじゃん…今更ながら照れる。ガキの頃からそんなの普通にしてたのにやっぱり意識してしまう
「イチャイチャ見せつけてくれるなぁ!!はっはっはっ!!」
「イチャイチャって…!」
「本当にお似合いな二人だな。焔。頑張れよぉ」
「何言ってんの?誂わないでよ!」
「あっはっは!!」
「…ごめんな。颯。おじさんそういうとこデリカシーなくて」
「まぁ…別にいいのですけど。そもそも焔頑張れって…あり得ないことを言いますね、あの人も」
「…あり得ない…か」
「何か?」
「いや。なんでもねぇよ。ほら食べな」
本当に…颯はグリグリと俺の心の傷を抉っていく…無意識なのだからたちが悪い…まぁ…俺の気持ち悟られないよう隠しているから仕方ないんだけど…
その後しばらくして店も込み合ってきたのでお暇することにした。実はこの店以外に…と言っちゃ失礼だが人気店なのだ。
豪快なおじさんとそこにある繊細な菓子やこだわりの飲み物たちのファンはとても多い。
「おじさん。またね」
「おう!またな」
忙しくしているおじさんをそっと見て店を出た。
目当てのDVDを見付けて帰りに簡単に摘まめるものをいくつか買い颯の家に帰宅する。
颯の家には大きなスクリーンのある部屋があってDVD鑑賞の時はそこにいつもいく。
帰宅したらアメリアさんも戻っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「後で紅茶持ってこようか?」
「大丈夫。色々買ってきた。ありがとう。また必要になったら声かけるね」
「わかったわ。焔くんごゆっくりね」
「はい」
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