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第18話
二人で肩を並べてスクリーンを見つめる。
颯の呼吸やまばたきの音まで鮮明に聞こえそうな距離…
ドキドキと胸は高まりきゅっと締め付ける。
そんな俺の思いなんて気づかない颯は食い入るように画面を見ていた
少し距離をとろうと動けば無意識だろう颯は俺との距離を積めてくる。
昔からそう。体のどこかが触れていないと落ち着いて見れないようだ
こっちにとっては拷問以外の何物でもない…がこれは受け入れるしかないのだ、煩悩と戦いながら見ているので内容は半分ほどしか入ってこないが…
数本見終わった頃颯はうとうととし始めて俺に完全に体を預け眠ってしまった。
これもいつものことで…
「颯…起きろ…」
颯は一度寝たらなかなか起きない…
「颯…」
「センセ…」
「っ…」
涙を流してそう呼ぶ颯…苦しい…痛い
…颯は…まだ彼を好きなまま…
いつまでこうやってお前の隣にいなくちゃならない?
いつかお前は俺じゃない誰かと結ばれて…幸せそうに笑うんでしょ?その人と供に笑って…泣いて…色々なことを共有して生きていくんでしょ?…俺の想いは何処へ向かえばいいの?…
「颯…好きだよ…俺にしてよ…」
勿論そんなこと本人には言えないけれどどうか…今だけ…そう願わせて…
颯の髪に口付けて抱き締める。
「こんなに…好きなのに…お前は俺を望んでない…」
「焔…」
「え?」
まさか…聞かれた?そう思って颯を見るけれど颯は夢の中だ…夢で俺と会ってるの?…大切な人を紹介したとか?…夢の中なのに苦しい…
「颯…」
このまま寝かせたら可哀想なので横抱きにしてこの部屋を出て颯の部屋にいく。
同じ階にあるのでたいした距離ではないが扉が開いた音を聞いたアメリアさんがやって来た
「あら…また颯寝ちゃったの?」
「ええ。」
「いつもありがとう。颯の部屋開けるわね」
扉を開けてもらって颯をベッドに寝かせ布団をかけた
「焔くん。一緒にお茶しましょ」
アメリアさんに言われ着いていく。
異国の上品な家具の置かれたリビング。真ん中にあるソファにかけてアメリアさんと向かい合う。本当に…颯そっくりだ
「颯…失恋でもしちゃった?」
「…」
「…そっか」
無言でいるのを肯定と捉えたのかアメリアさんは切なそうに俯いた
颯と同じ顔がそうするとまた苦しくなる
「颯は…男の子しか…好きになれない子よね?」
「…」
「気付いてたの。女の子に声は掛けられるけれど…颯が女の子には色情を浮かべないこと…まぁ…まだ中学生だしそんなのなかったのかもしれないけれど…ここ一年かしら…颯に艶がでたって…そう思っていい人が現れたのだと気が付いた。一度ね、学校解放の日…見たの…颯がこれまで見たこと無いような表情である人を見詰めてたこと…お相手は…男性の先生だったわ…勿論他の生徒さんや先生方に気付かれないような些細な違いだったのだけれど…私は親だもの…わかってしまう…そのお相手が先日女性と歩いていたのも見たわ。相手の方はすぐに私に気がついてね。ご挨拶してくださったの」
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