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第23話

「よぅ。待たせたな」 「先生…」 学年主任である三國 轍先生。彼は颯の努力を知っていた。だからあの噂が出たとき可笑しいと思い仲の良い俺に話しかけてきたのだ。 三國は今時の教師には珍しく正義感も強く面倒見もいい。このご時世周りの声や保護者からのさまざまな無理難題から逃れるためご機嫌伺いする者が主なのでとても貴重な人だ。 さっきあった出来事を話す 「そうか…わかった。後は任せろ」 「はい」 「あの。三國先生」 「ん?何?三葉」 「ありがとうございます」 「いや。当然のことしたまでだし」 三國と別れ教室に戻る。さっき颯本人に直接下品な言葉を投げられたのを見られていたのか周りの目がいつもより厭らしい気がする 「三葉ー。俺にもヤらせてよ?お前女みてぇだし」 ニヤニヤした顔で数人に取り囲まれた颯。 「…貴方たちはバカなのですか?そんな根も葉もない噂を鵜呑みにするなんて。呆れて物も言えません」 「またまた。体疼いて仕方ないんだろ?」 「気持ち悪い。触らないで下さい」 「お前らいい加減にしろよ」 「お前が一番良い思いしてんだろ?満留。お前いつも三葉にベッタリだしな」 「どうなの?三葉の体。良さそうだよなぁ。あぁ。羨ましいぜ」 人数が多すぎてうまく立ち回れない…くそ…殴れたら早いのに…でもそれは颯が良くは思ってない。颯の前で我を失って殴ることだけはしたくない。 「なぁにしてんのぉ?たのしそー」 不意に声が響く。それに皆が振り返る 「おぅ。雪輪じゃん。良いところに来たな。今ね三葉を抱かせてもらうところだったの」 「へぇ…」 少しずつ気配が近付いてくる。颯はその気配に震えていた。怖いのだろう。ありもしないことを好きな人に本気にされてしまったら軽蔑されてしまうと…そう思うはずだから 「俺はそんなことして…」 颯が焦って否定しようと口を開いたがそれに被せるように雪輪が口を開いた 「三葉くんてどんな子?見たぁい!」 まだ人垣で颯から雪輪の姿は見えてない 徐々に近付く空気。颯は今でも泣き出してしまいそうだ…。でも今抱き締めてしまうとまた変な噂がたってしまう…そう思うと動けなかった。 「初めましてだよね?こうやって近くで会うの」 雪輪が通るのに今まで群がっていた奴等が道を開ける。不思議な奴だ…何故か逆らえないような空気を纏っていた。そして今…颯の前に立った。近くでみたのは初めてだが圧倒的な力がある強い眼差しを持った奴だった。 「っ…」 雪輪が息を飲んだのがわかった…それはそうだろう。今の颯は凄まじい色気を放ってた。好きな人に見詰められて…その人に軽蔑されてしまうのかという不安から少し瞳を潤ませていて、少しだけ目線の高い雪輪を上目使いでみているのだから。 「…」 雪輪は息を整えるように目を閉じ再度開けた 「君が三葉くんだったんだね」 「…俺は…」 「なぁんだ。あんな噂デマだったんだ」 「は?」 周りがざわめく

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