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第25話
しかし俺の心配は無用だったようだ。三國が何をしたのか俺たちにはわからないがあの噂はただの噂としていつしか消えていった。
今は邪な視線を颯に向ける奴は少なくなった。
「雪輪が助けてくれた…」
「そうだな…」
このことで颯が雪輪への思いが強くなったのは言うまでもない。幸せそうに笑う颯を痛む胸を押さえながら見詰めていた。この恋が叶うといい…叶わなきゃいい…俺の感情はぐちゃぐちゃ…でも…颯は幸せになって欲しい…でもできるなら…俺が…なんて…無理な話なのに願ってしまう
変わったのは颯の人間関係もだった。俺が一緒にいられないときは引田や滋野が側にいてくれるようになった。
颯は前より口数も増えてきて周りの奴とも打ち解けていった。
それを嬉しくも寂しく思う。でも…きっとこれでいいのだ…一生側に居る。今でもその考えは変わらないけれど颯が誰かと生きると選んだときにきっと俺の傷は少しでも…楽になれると…そう思うから…だってそう思わないと生きていけない
「どうした?満留。悩みか?」
ぼんやりしてたら滋野が話しかけてきた
「いや。何か親な気持ちで颯をみてた。颯も変わったなぁって嬉しく思う」
「あぁ。三葉の方がお前にベッタリだったんだってな。三葉に聞いた。人見知りなんだろ?」
「元々珍しい見た目してるからって変な感情を持った奴等に舐めるようにみられてきたんだ。颯は。その時俺は何も思わずにただの一人の人間として颯と一緒にいられたからなつかれてたんだよね。邪な目で見ないし何か困ったときはすぐに助けられるように側にいたしさ」
「…三葉のこと好きなの?」
俺にしか聞こえない声で滋野がささやいた
「だから言っただろ?親みたいな気持ちって。父親じゃ烏滸がましいか…ん~…手のかかる可愛い弟みたいな感じかな」
精一杯本音を隠す。ポーカーフェイスは得意だ。だってそうしないと颯の隣にいられなかったのだから
「そっか」
それ以上滋野は聞いてこなかった。とてもありがたい
「まっ!でも三葉が満留離れしたからお前も彼女とかすぐ出来んじゃね?お前モテるんだから」
「そんなことはない」
正直颯じゃない奴にモテても嬉しくはない。
「いつも三葉が隣に居るから女の子達はお前に近寄り難かったらしいぜ。どうやっても三葉には敵わねぇからな」
それはそうだ。どんなに美人がいても颯以上はいない
いたとすれば母親であるアメリアさんくらいだろう
「ところで満留」
「ん?」
「今度の休みって暇?」
「特に何もないけど?」
「たまには俺とも遊んでよ」
「は?何で?」
「いいじゃん!ね?」
「面倒だ…」
「そう言わずにさぁ…あ!!なぁ。三葉」
「どうしましたか?」
「今度の休み満留借りて良い?」
「えぇ。構いませんが。俺に許可をとる必要はないでしょ?」
「なら決まり!13:00に駅前ね!」
「そんな勝手に…」
「たまには俺以外とも遊んでください」
颯にそう言われてしまっては何も言えない…
「わかった…」
憂鬱だが仕方ない…
そしてその日を迎えた
「焔」
「朝からどうした?颯」
「今日出掛けるでしょ?」
「あぁ。」
「これ。母からです」
「何?」
「服ですね」
「は?」
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