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第32話

滋野の姿を見送って女に向き直った。 さり気無く左の薬指を見ると女の長くて綺麗な指に良く似合うプラチナの細身のリングが光ってた 「少しだけお茶付き合ってくれないかな?」 近くのカフェに入ってコーヒーを啜る。正直味はしなかった。 「それで。何の用ですか?」 惚気話でも聞かされるのだろうか? 「…洸哉…亡くなったの」 「え…?」 「あいつね病気だったんだ。気付いたときにはもう手遅れでね…」 「わかっててあんた結婚したの?」 「洸哉とは結婚してない。」 「は?…」 「私が結婚したのは洸哉の双子の兄の方。私たち幼馴染みなの」 「…」 「洸哉はね好きだと言う感情がわからないようなそんな人だったの。その洸哉に恋人ができたと…好きな人ができたと報告してもらえたときは自分の事みたいに嬉しかった。まさか相手がまだあどけない中学にあがったばかりの生徒さんだとは思わなかったけれど…それでもとても洸哉は幸せそうだった」 女の言葉を、一つ一つ噛み砕く…死んだ?あいつが?じゃあ… 「あいつもバカだよね…颯くんのこと大好き過ぎてあんな態度とっちゃうんだもん。君が来てくれた数時間前ね私いきなり家に呼び出されて何事かといってみたら颯くんあいつの前でボロボロ泣いてて…」

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