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第39話

洸哉side 今日は別れを告げようと決めてた日。付き合い出した記念日だ。大切なこの日に俺は世界で一番大切な人を泣かせるんだ… 呼び出した颯くんはいつものように嬉しそうにやって来た。 離したくないな…でも…もう…俺は… 今日は抱かないつもりだった…手さえ握らないでそっけなくするつもりだった…でも出来なくて…颯くんに見られないよう後ろから追いたてた 「いやっ…洸哉さんっ…顔…見たい…キスしたい…っあ!抱き締めたい…」 「…」 何度も懇願されたけれど俺は応じなかった。だって聡い彼のことだ…俺の本音に気づいてしまいそうで… 「あっんん!!洸哉っ!!」 掠れた声で俺の名を呼ぶ颯くんを後ろからギュッと抱き締めた。これが彼に触れる最後だ… 終わった後颯くんは涙で顔は濡れてて…でもやっぱりきれいだった 「洸哉さん。どうしたの?今日」 着替えを済ませた颯くんが心配そうに言ってくれる…ごめんね…そんな顔させて… 「…」 「洸哉さん?」 「颯くん。終わりにしようか」 言った…言ってしまった…もう…彼とは一緒にいられない…本当に愛してた…誰よりも大切だった…だから俺は嫌われる。君に嫌われて…一人死んでいく…さよなら…颯くん。 意外に頭は冷静で涙の1つも出なかった 「え?」 「飽きちゃった。転勤も決まったしいいタイミングでしょ?」 何て酷い言葉を投げ掛けるんだろう。確かに自分が発してるのにまるで別の誰かみたい… 「そんな…何で…俺…何かしましたか?…」 「だから。飽きたんだって。綺麗な若い男と試しときたかったの。結婚する前にね。十分楽しめたよ。じゃあね。帰ってくれる?」 「いやだっ…どうして…俺は…」 「…そういうの鬱陶しいんだよね。君がここまで俺に嵌まるなんて見ていて面白かったし滑稽だったよ。始めから遊びなのにね」 「そんな…」 「夏に結婚するんだよね。ずっと付き合ってる本命がいたんだよ。だから君がいたら困るんだ」 その時インターフォンがなった。相変わらず時間きっちりだな 「開いてるから上がってきて」 「洸哉。どうしたの?急に呼び出しなんて」 「ん?お前に会いたかったの」 良くわからないまま呼び出されたえみり。困惑してる 「お客さん?」 「あぁ。今から帰ってもらうところ。丁度いいから紹介しておくね。三葉くん。さっき話してた人だよ」 敢えて苗字で呼ぶととても哀しそうに俯いた 「あ!君が颯くんね。初めまして。えみりです」 「初めまして…」 「…泣いてるの?…」 えみりが心配して颯くんに近付く。 それ以上颯くんに近寄って欲しくなくてえみりを後ろから抱き締めた 「ちょっと!洸哉!」 えみりにしか聞こえない声で囁く。 「少しだけこうさせてて。何も言わないで…」 「あんた…まさか…」 無言で頷くとえみりはおとなしくなった。 「あの…俺…帰ります。お邪魔しました。先生お元気で」 最後は涙を浮かべながらも気丈に微笑んで颯くんは部屋を出ていった。足音が遠ざかり聞こえなくなる… 「洸哉…」 「ごめん…えみり…克哉にはちゃんと謝るから…許して…これしか方法が浮かばなかったんだ…ごめんね…ごめんね…」 えみりは堪えきれなくて涙を流した俺の背中を擦ってくれ一緒に泣いてくれた ありがとう…えみり… 俺は数日後から入院することになってる。もう死ぬのに意味あるのかわかんないけど。 だからそのままえみりに手伝ってもらって荷物の整理を始めた。 颯くんと過ごしたこの一年は本当にかけがえのないものだった…人生で一番幸せな時間だった… えみりと俺はお互い無言でひたすら片付けていく。

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