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第42話

「ただいま」 「おかえり」 「母さん。今日は早かったんだね」 「うん。さっき戻ってきた。あら?デートだった?かっこいいじゃない。我が息子ながら」 「いや。学校の友達と遊びに行ってた。少しだけ颯に話あるから行ってくる」 「じゃあ。これ持って行ってくれる?」 母から煮物を詰めてもらって隣に向かう。呼び鈴を押すとアメリアさんが出てきた 「いらっしゃい。どうぞ。颯は部屋にいるわ」 「これ。母からです。あと。この服ありがとうございました。友人がデザイナー志望なのですが絶賛してて紹介して欲しいって言ってました」 「ありがとう。よかった。大丈夫だったみたいで。お友だちと機会があればお会いしてみたいわね」 「おばさん。」 「なぁに?」 「中学のときのこと覚えてます?颯の失恋の」 「えぇ。覚えてるわ」 「相手…亡くなったんですって…颯と別れてすぐのことだったって…病気で余命幾ばくもなくて颯をあんな形で…」 「そうだったのね…そう…」 自分の事のように哀しそうに俯くアメリアさん。 「最期まで…颯を愛してた…」 「うん」 「それを颯にこれから話してきます」 そのまま颯の部屋に上がる トントン ノックするとドアが開いた 「おかえりなさい。焔。もう帰ったのですね」 「ただいま。滋野誉めてくれた」 「そう。よかったです…どうかしたのですか?焔」 「…七雲先生…」 「…」 「亡くなったんだって」 「え?…」 「さっき…えみりさんに会った」 颯は無言で話を聞いていた 「そうだったのですね…俺は…愛されてたんだ…先生…」 颯が涙を流す。俺はそれを見つめていることしか出来なかった 「あの時は…本当に…苦しかった…でも…先生はもっと苦しんだはずです…あの人はとても優しくて繊細な人でしたから…気付けなかったことが悔しいです」 「今よりも子供だったんだ…仕方ねぇだろ」 「でも…結果俺は先に進めた…愛してくれてありがとうと…伝えにいきましょう。一緒に行ってくれますか?」 「勿論だよ。お兄さんの連絡先聞いてるよ。連絡してみる?」 すぐに連絡すると克哉さんは出てくれて明日車で送ってくれることになった。

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