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第43話
「おはよう。焔くん」
「おはようございます。突然すいません」
「初めまして…三葉 颯です」
「初めまして…」
颯を見ると克哉さんは息を飲んで暫く見惚れてた。
「洸哉が言っていた通りだね。会わせたがらなかったのもわかるよ」
少し無理して明るく克哉さんは言った
助手席にはえみりさんが乗ってて颯に謝ってた
「真実を…話していただいてありがとうございます。あの時はそうするしかなかったんですよね。それは僕もわかります。だから…もう大丈夫です。ありがとう」
颯はしっかり克哉さんの目を見つめて伝えた。もう声に迷いや憂いはなかった。
みんなで墓参りをして一緒に昼食を取り先生の思出話に花を咲かせてた。
俺にはわからない先生の姿。俺だけそこから爪弾きにされたみたい。俺だけ違う空間にいるみたい…三人の会話をぼんやりと聞き流していた
俺は颯の事どれだけわかっていたのだろう…いや…わかっていないのかもしれない…
「ちょっと失礼します」
その場から逃れたくてトイレに向かう。そのまま個室に入って人知れず涙を流した。やはり俺はそこには入れない。ねぇ。先生。貴方は俺に颯を託そうとしていた。でも…俺にはその役目は果たすことはできなさそうです…颯の中の俺はただの幼馴染み以上にはなれないようです…ごめんなさい…
貴方が命を削ってまで渡してくれた颯への想いの橋を渡ることも渡ってもらうこともできないようです…
「ごめん…先生…俺…やっぱり耐えられないかも」
誰に聞かせるでもなく呟いた
息をついて個室から出て顔を洗う。俺は強い人間でいなければ…颯に弱い俺なんて見せたくない。
「笑え…」
自分に言い聞かせて無理矢理に口角をあげた。
「大丈夫…大丈夫…ふぅ…よし…」
席に戻るとまだ話は盛り上がってた。
「そうだ。颯くん」
「はい」
「これ…」
そう言いながら克哉さんは小さな箱を取り出す
「これ。洸哉から君に…」
「開けてみてもいいですか?」
中にはプレートのネックレス。颯の華奢な体に丁度いいくらいの大き過ぎないもの
裏に刻印がされてた。
『All I want is for you to be happy』
「これ…」
「洸哉が君に渡し損ねたプレゼント。君のためにずいぶん前からオーダーしてて…出来たのがあいつが死んだ日だった」
「…洸哉は亡くなるその瞬間まで貴方の幸せを願ってた。笑顔が消えないことを願ってた…その想いがこれには詰まってる。だから…お守りとして持っていてくれないかな?」
「…ありがとう…ございます…」
「それと…こっちは…君へ…」
「俺に?」
箱を開けるとそこにはブレスが入ってた。小さなプレートに一言だけ
『I trust you』
そんなこと…言われたって…俺のできることはそう多くはないのに…
「無責任な人だ…」
「そうだね。そうかもしれないけどそれでも君に伝えたかったんだろうね」
「焔…」
「ん?」
「ありがとう…いつも側にいてくれてありがとう…」
「…幼馴染みだからな。お前のお守りは得意だ」
そうしてしばらくして待ち合わせしていた場所に送ってもらい別れた。きっともう会うことはないかもしれないな…ぼんやりとそんなことを思っていた
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