46 / 124
第46話
「三葉!」
「どうかしましたか?雪割」
「この間借りてた本持ってきた。ありがとうな」
最近雪輪と颯は仲がいい。二年になって同じクラスになって互いの本の好みが似ていることに気付き急接近していた。
颯はうまく想いを隠してる。颯の言っていた通り雪割には水無月しか見えていないようだから様子見しているようだ。
当の水無月はというと同じ委員会の先輩に恋しているようだ。時折雪割が一緒に委員会に向かう二人の姿を見ては切なそうに顔を伏せることも一度や二度ではなかった。先輩の名前は…
芙蓉葉月。爽やかなルックスでとても温厚な人だ。いい評判しか聞かない。そして二人で並ぶ姿はとてもお似合い。先輩の気持ちは知らないが可愛い後輩だと言うことは変わり無さそうだ
「雪割」
「なぁに?三葉」
「この本読みましたか?」
「まだ読んでない!」
「俺は読み終わったのでそのまま貸しますよ」
「サンキュ」
そんな急速に仲を縮めた二人を見ながらクラスメイトは雪割×颯派か雪割×水無月派かで勝手な妄想を繰り広げていた
女子高生かよと思わず言いたくなるような光景だ。
この学校は元は男子校だったからか女子はクラスの一割~二割程度。それ故なのか男同士の奴等も多くそれに対して偏見はほとんどないように見える
「やっぱさ。安定の秀才カップルだろ」
「いや。どう考えても昔から何でも知ってる幼馴染み同士が王道でいいだろ。」
「いや。でもさ!幼馴染み同士なら満留×三葉がお似合いだって!」
「…確かに…」
そこにたまに俺と颯を推してくれるやつもいて。まぁ複雑な心境だ。
「何の話し?」
「雪割はどうなの?三葉と水無月ならどっちよ」
「んなこと話してたの?暇だねぇ。俺的にはどっちもありかなぁ?どっちも綺麗だし可愛いし。まっ。実際のとこなぁんもないけどなぁ」
「えぇ?つまんない」
「いやいや。お前らがだろ」
「何だよぉ。雪割ぃ!お前は選り取り緑だからって。」
「何それ。お前も頑張れよぉ!てか授業始まんぞ」
「はぁい」
そんな日常をそっと、みつめながらため息をはく。
どんなに周りが騒いでも颯には届かない。妄想ならいくらでもできるしいくらでも話せる…でも現実はそううまくはいかないものだ。
俺は颯を想い、颯は雪割を想い、雪割は水無月を…みんなみんな片想い。この誰かが唯一がみつかるなら何か変わるのか?
そうなるのはこれから少し後だった。
数ヵ月後水無月に恋人が出来た。それがあの芙蓉先輩だった。
ともだちにシェアしよう!