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第50話
「…あのさ…ゆきちゃん。確かに俺は美空のこと好きだったよ?でもね、付き合ってはいないよ」
「いいえ。あなたたちは体の関係もあります!調べさせてもらいましたから。」
雪割の静かな怒りに気づかないまま絶対に口にしてはいけないことを大きな声で発した。
一瞬空気が凍りついた…そして周りが騒ぎ出す
水無月は悲しそうに目を伏せ小さく震えうつむいた。水無月はとても優しい奴だ、おそらく自分のことじゃなく雪割が変に思われないかと不安にかられているのだろう。
でもそんな思いは誰も持たない。雪割と水無月が関係を持っていようが彼らを否定する奴はここにはいない。
「あのさ…」
いつもよりいくらか低い声で雪割が言葉を発する。それに皆息を飲んだ
「そういうことってこんなところで言うもんじゃない。それが事実だとしてもね。それが事実じゃなかったとしたら?ある意味名誉毀損だよね?」
「どうもしません。どうでもいい。中を傷つける人は誰一人として許さない。むしろ中を騙してるんですからそっちのほうがおかしいでしょ?そっちの方が悪です!中。行くよ」
それでもそいつは一歩も引かない。言ってることが真実なのかどうかわからないくらいの表情で話し続けた。
「やだ…行かない…お前との婚約だってそもそもないし親公認でもない。俺が好きなのは雪輪先輩であってお前じゃない。それに先輩は俺のことちゃんと振ってくれてる。でも俺が側にいたいからここにくる。会いに来て顔を見られただけでも幸せな気持ちになれる…雪輪先輩が俺みたいなやつじゃなく水無月先輩みたいな人が好きなこともわかってる。それに…雪輪先輩が水無月先輩が好きだったってことも…それでも俺は先輩のことが好きで…諦めきれない…友人としてでも側に置いてもらえている…それが堪らなく嬉しい。余計なことしないで?こう。先輩たちは何も悪いことなんかしていない」
中が必死に否定する。その姿は演技ではないことは明白だ。
「中のばか!!叶わない恋なんて時間の無駄だよ!それより自分を好きでいる人の元へ来た方が幸せになれる!!」
「俺の幸せは俺が決める!」
坂本は目に一杯涙を溜め走り去っていった
「先輩方すいません!!ご迷惑をおかけしてしまって…」
中が深々と頭を下げる
「取り敢えず場所移そう?」
黙って隣で聞いていた雛菊が声をかけた。それは雛菊には珍しく大人っぽいしっかりとした声だった。それを素直に受け取って雪割、水無月、そして中は教室から出ていった
周りはそれを黙って見送った。
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