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第60話

しばらく抱きしめていると颯が落ち着きを取り戻したので教室に戻る 颯の席は教室の後ろの扉のところ。だから幸い涙の痕には気付かれないで席につけた。 その後はいつものように授業を受け昼休みを迎えた。まもなく中が以前のように明るく教室に入ってくる。きっとみんなに心配されないように明るく振る舞ってる 「せんぱーい!!」 「あたるん!あたるんだぁ!!睦月と仲直りしたの?」 クラスの誰かが声を掛ける。それを皮切りに多くの奴から言葉が掛けられた 「仲直り?喧嘩してませんよ?」 「えぇ?暫くこないからそう思ってた。あたるん痩せた?」 「そうですか?」 そこへ滋野がゆっくりと歩みより自分より背の高い中の頭を撫でた 「あたるん…おかえり。平気?」 「あのときはありがとうございました。お陰で復活です」 心底安心したように滋野が微笑み中を抱き寄せようとすると雪割が声をあげた 「おーい!俺の中返してくんない?」 「うーわ…睦月…どうした?あ…あまりにもあたるんに冷たくしたから俺たちに捕られるって思ってんだろぉ?」 「中は俺にベタぼれだからそれはありませーん!」 「えぇ?わかんないよぉ?あたるんモテるんだからなぁ!すぐに睦月よりいい奴なんて見付かるんだからなぁ!」 「ほぉ…例えば?」 「っ…くそーっ!!睦月の…睦月の…男前!」 「ぷっ…何それ…」 「何で神はお前に二物も三物も与えたんだよぉ!!ずりー!!」 さすがの滋野だ。すぐに状況を把握して自分が今やらなければならないことを理解し会話する。 「あの…えと…俺のために喧嘩?しないで下さい…」 「あたるんっ…可愛すぎか…」 「いや…こんなデカイ男に可愛いとかないですから…俺この中で一番でかいし」 「あたるん…酷い…俺たちだってこれから大きくなるもん!」 「いや!そんな…傷つけるつもりは」 「…嘘だよ。あたるん。何かあったら睦月にすぐ相談してね?勿論俺たちに浮気してもいいよぉ?あたるんは一人じゃない。沢山沢山いること忘れないで…一人で抱え込まないで。約束ね」 滋野はもう一度中の頭を撫でて笑いかけた。 「中くんおいで。お弁当食べよう」 話していると水無月が中を呼ぶ。雪割はそっと中の手を握った。いつも雪割たちと一緒に食べていた場所へ座らせた 「今日は中くんの好きな唐揚げにしたんだぁ。いただきます」 「今日は雛先輩は?」 「雛は面接行ってる」 「そうなんですね」 「雛はあんなしてるけど実は睦月の次に頭いいんだよね。特に英語の成績はずば抜けていいんだ」 「そうなんですね」 「意外でしょ?」 「ははっ。驚きました」 「英語話すときの雛はいつもと違って男前だよぉ」 中は無理した笑いでもなく自然だった。 「良かった…あたるん…雪割とうまくいったのかもね?」 「そうかもしれないな」 颯は静かにその姿を見つめていた

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