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第68話
颯side
「お腹すいた…」
「そうですね。座っててください」
どうにかこの場を変えたかったのだろう。子供みたいに呟いている。これ以上気付かせてはいけない…気のせいだと思わせなければならない…手に取るように焔の気持ちがわかる…どうしよう…
「あ。焔これだけ持ってってください」
焦ってこれから運ぼうとしたサラダを手渡そうと振り返り踏み出す
「ん」
「おっと…」
足を縺れさせて焔の胸に飛び込んでしまう。焔の鼓動が早い…気付いてはいけないのに…ねぇ…焔…俺は…
「すいません。俺としたことが…」
「…」
顔をあげると…焔にキスされた…どうしよう…次第に鼓動が早まる。
焔はバツが悪そうに目をそらす
「…っ…」
「近くに美味しそうなのあったからつい」
「そんなにお腹空いてるの?焔は仕方ないですねぇ」
焔…
「それ。もらうねぇ」
そのまま受け取ってテーブルに向かう焔に気づかれないように唇を指でなぞった。嫌じゃない…もっと…焔と…そんなことあってはならない…この気持ちは…きっと失恋の傷が見せた幻だ…頭を振って残りの食事を運び向かい側に腰かける。いつもの席だ
二人で手を合わせて…
正直味なんてしなかった。焔の唇の余韻がまだ残ってたから。
焔は俺に気付かれないよう必死で取り繕ってる…だったら俺もいつも通りを心がけないと…雪割を思うことで俺は表情を隠すのは得意になったんだ
何を話したか覚えてないほど下らない話をして眠くなった。いつものように焔のベッドに潜り込み焔に抱き締めてもらえば睡魔にすぐに負けて夢の世界へ向かっていた。いつもなら朝まで目は覚めない。なのに暫くしてベッドから降りた焔の気配に気付いてしまった。
トイレ…かな?でもさっき済ませていた…不思議に思ってそっと後を追った。やはりトイレで食べ過ぎかな?そんなことを思って立ち去ろうとしたら焔の熱っぽい声が聞こえた
「颯…好きだ…」
そんな…そんなの…だめ…驚きすぎて動けなくて辺りは静まり返る。そんな中クチュクチュという音が微かに聞こえた…
嘘だろ…俺の名前を呟きながら…まさか…嘘だ…
もうすぐ終わりに近付いてるのか少しずつ荒くなる呼吸……だめだ…ここにいてはならない…静かに部屋に戻って先程と同じ体制で目を閉じると焔の欲に染まった顔が思い浮かんで
「嘘だろ…」
俺のモノも猛って滴を溢していた。急いでそれを処理する…まさか焔を思ってこれをする日が来るなんて…
「焔…だめだよ…っ…」
だめなのに…何で…そのまま片付けをして目を閉じたらすぐに睡魔がやって来た
罪の意識を感じながらもどこか幸せな気持ちでもあった…焔に愛されることはきっと幸せだから…
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