82 / 124

第82話

ようやく涙を引っ込めて着替えて部屋に戻りスマホを手にする。 文章を何度も打っては消しを繰り返してようやく送ったのは 「会いに行ってもいい?」 颯からの返信はない…これが現実… スマホを放り出してベッドにダイブする そのまま眠ってしまった それからどれくらいたったのだろう。日は傾き外は少しだけ薄暗くなってた 「…寝過ぎた…」 枕元のスマホを手にしても何も通知はない… 「颯…」 「焔。入るわよ」 「母さん…どうぞ」 「焔。大丈夫?出かけるって行ってたのに寝ちゃってたから。具合悪い?」 「いや。朝いったでしょ。寝不足だったって」 「そうだったわね」 「どうしたの?」 「お母さんこれから急遽仕事いかないとならなくなっちゃって。父さんはもう道場に行って今日は自治会の飲み会だから帰りは遅くて私は帰りがわからないのよ。だからご飯は用意しておいた」 「ん。ありがとう」 「…焔…」 「何?」 「タッパーにおかずいれておいたからお隣に持っていってくれない?」 「出勤途中に母さんがいけば?」 「そう言わないで。お願い!じゃあ行ってきます」 仕方なく母に言われた通り隣に届けることにした。チャイムを押すけれど誰もいる気配がない 「留守?…颯…一人で出掛けた?誰かと?大丈夫なのか?」 タイミングよくスマホが着信を知らせた 「もしもし」 『ごめんね。今昌子さんから連絡来たんだけど頼と買い物に出てて家にいないのよ。直ぐに戻るけど颯はいるから勝手に入ってくれて構わないわ。リビングのテーブルに置いておいてくれないかしら?それと…颯ね…今日は部屋から出てこないの…だから…様子を見てくれないかな?私や頼さんが声かけてもダメで…勝手にドアを開けて入って様子は見たけど怒鳴られちゃって…ごめんね。焔くんにしかお願いできなくて』 「…俺も同じかもですよ」 『…それでも…貴方に様子を見てほしいの。お願い…こんなこと初めてで…どうすればいいのか…わからなくて…ごめんなさい…ダメな親でごめんなさい』 「ダメじゃないですよ。凄くいいご両親です。それは颯が一番わかってるはずだからどうかそんな悲しいこと言わないで」 『ありがとう…』 「様子を見てみますから気を付けて下さいね」 『えぇ。ありがとう…焔くん』 颯がご両親を愛しているのは目に見えて明らかだ。だからこそ颯が怒鳴るのなんてどうかしてる…やはり俺のせい?そうなのだろう 「颯。入るぞ」 勝手に入ると布団に丸まっている姿が見えた 「颯。寝てんの?」 「…」 「…寝てる…か…なぁ。俺さ八重と別れた…やっぱり無理だ。お前に言われたからって付き合ったけど…好きになれなかったし一緒にいられなかった」

ともだちにシェアしよう!