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第87話

颯side 『もしもし。颯くん!』 「昌子さん…どうしました?」 『…焔が…目覚めないの…』 「疲れているんじゃないですか?焔…昨日は恋人と会ってたし…」 別れたと言われてほっとした…この勝手な感情は何?…焔にどんなに思いを告げられても答えられなかった。焔は俺の目には触れないようにするって…そういって帰っていった。追いかけることが出来なかった。だってこの沸き上がる感情が何なのかまだはっきりしなかったから。 一緒に過ごせなかったら何か答えが見つかるのかもしれない…そう思うと焔の言うことも一理あるんだって…そう思ったらますます追えなかった。 その翌日のこと。焦った声の昌子さんから連絡があった。焔が目覚めないと…きっとあれだけキスマークついてたんだ…眠ることもなく楽しんでいて疲れているのだろう。その時はそう思っていた 『どんなに揺すっても叩いても起きないの!』 「は?」 『どうしよう…どうしよう…』 尋常じゃないほどの昌子さんの焦った声…嫌な予感がした…急いで学校に行く準備をして焔の家に寄った 少しの身動ぎすらせず眠り続ける焔…昌子さんの言った通りどんなことをしても焔は起きなかった。 1日様子を見るように伝えて俺は学校へ向かった。 そしたら焔の恋人…凪くんがやって来た 「颯くん…ごめんなさい…」 「どうかしましたか?」 「焔くんを無理矢理にその…襲おうとしました」 「…」 「あのキスマークも…全部僕が眠っている焔くんに勝手につけたものです」 「…そう」 「僕…はっきりフラれました…貴方のことが好きだからって…わかっていたんだけど…薬を少し…入れて…無理矢理に…自由を奪って…いけないことしようとしました。でも……僕は…諦めます…好きな気持ちはまだあるけれど…少しずつ…忘れます…でも一つだけ言わせて?」 「何?」 「焔くんを苦しめないで!始めからその気がないなら勘違いさせないで…縛らないで!!お願いします…」 「…」 「お願いします!」 「わかった…」 「じゃあ…」 「ねぇ…」 「…何?」 「…俺が…焔を好きだとしたらどうする?」 「…だったら…気持ちを伝えてあげて。焔くんは貴方の前でだけ幸せそうな顔するの…僕には出来なかったから。好きなら…大切にしてあげて…でも…はっきりしてないならやめてあげて。わかるよね?」 「…」 「じゃあ…」 真っ直ぐに焔のことを思える凪くんが羨ましいと思った…俺はどこかで歪んでた。傲慢だった 焔に特別な感情があったのは事実だったけどそれが恋愛とは結び付かなかった。 いつも隣にいるのが当たり前で離れていくことなんてないって決めつけてた。でも凪くんと付き合ってた時の姿を見ていて離れていく想像がついて…すごく苦痛だった。 離れないでと焔の想いを知っているのに伝えて…なのに…俺は…焔との将来なんて描けなくて…あぁ!もう…本当に…最低だ… 「焔が好き…」 声に出すと全てがするすると繋がっていった。今日帰って起きていたら想いを伝えよう…自分の気持ちに気付かなくてごめんと伝えよう…パートナーとして一緒に生きていきたいと伝えよう…今さら何なんだと言われるかもしれないけど…でも伝える… そう決意して帰ったら…まだ焔は眠り続けてた。

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