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第93話

「颯はお前と友人ではなく恋人になってしまったら別れが来るかもしれない。そう思い続けていたんだろう。だから自分の気持ちにも気付かなくて長く経ってしまった。それがお前と八重が付き合ったことで気付いた。そしてやっとお前の気持ちに答えようと行動しようとしたら」 「俺がおかしくなってた?」 「何故か颯のことだけ忘れてしまった。それだけお前が颯を思っていたからだろうね。だからこそ颯への思い…それを封じるため颯のことを記憶から消したんじゃないの?それにさお前なんかキャラ変わってんよ?」 「へ?」 「そんなふわふわしたキャラでもないしニコニコ笑うキャラでもなかった。そこは八重に影響されたのかな?…八重に薬盛られた後遺症ってことも無きにしもあらずかな?」 「薬盛られた?」 「あぁ…うん。八重に別れを告げたら八重が自棄起こしてお前に一服盛ったんだ」 「八重に…触られようとして…気持ち悪くなったんだよね…」 「…体は覚えてたんだな」 「そうなのかな…でも…八重に触りたいって思うし…もっと近くにいきたいって…そう思うのは…」 「颯にそうしたかったからじゃないの?」 「…俺…どうすればいいのかな…」 「そんなの知らねぇ。お前がそれでも八重と一緒にいるって言うのなら俺としては万々歳だけどな。颯の寂しさに漬け込める」 「…颯と…また…付き合う…の?」 「…そうなりたいけど…無理だろうな。颯は一途だから好きになればずっとその人を思い続ける。睦月の時みたいにね。」 「雪割?」 「うん。睦月のことが一年の時から好きででも睦月には好きな人…美空がいたから颯はただ見つめてるだけだった。美空に恋人ができて…暫くしてあたるんに出会って…そして付き合いだした。颯はそこで初めて告白してフラれた。わかってて思いを伝えたんだ。そこで区切りをつけてた。健気だよな。そんなところも俺は好きだった」 「…」 「…俺と付き合ったのは…颯がお前に告白された翌日だった…お前と友人でいたい…だから誰でもいいから恋人を作ってお前に諦めさせて友人と言う立場を守ろうとしたんだろうね。睦月にフラれてすぐに俺の告白にOKを出してくれて やっぱり颯らしくなくて…でもその瞬間は天にも昇れそうなくらいうれしかったんだ。結局さ颯の中でお前が一番なんだよね。一生を共にしたいと思えるのはお前だけなんだよね…」 「それなのに…俺…何も覚えてない…」 「あいつは我慢するやつだから今頃きっと…」 「でも…今行ったって…何もならない」 「そうだな。颯が苦しいだけだな。八重も嫌がるだろうしな…」 「…」 大切なことを忘れてしまってるんだ…思い出そうとしても全くわからない…このままだとどうなってしまうのかな? 八重も颯も苦しめて…俺のいる意味ってあるんだろうか…俺がいない方がすべてうまくいくんじゃないかな? 志望校は変えたから…変えた?元々どうするつもりだった?… 「吐きそう…」 「無理すんな。今後もし颯のこと思い出せなくてもこれからは作れるだろ?これからまた友人から始めればいいじゃん。って俺が戸惑わせてんだけどね。これぐらいの意地悪許せよな?颯の気持ちを全て持ってんのお前なんだから」 「あぅ…わかっ…た…よ…」 「にしても…お前顔いいからそんな隙だらけな顔されると…はぁ…間違い起こしそう」 「へ?」 「…本当に…やばいくらい可愛いな…おい」 「俺が?こんなガタイのいい男が可愛い?ないでしょ」 「いや…だからこそのギャップ?…やべぇなぁ…お前はこれまで全く隙が無かったんだ。なのに…お前さかなりの男前だし近寄りがたい感じだったんだよ。けど…このままじゃ…うん…これまで遠巻きに見てたやつらも動き出すかもな」 「えぇ!!」

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