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第100話
頼さんはいつも以上に饒舌だった。きっと俺を気遣ってくれているのだろう
テーブルの下では颯が俺の手に手を重ねてきゅっと握ってくれてた。
思い出せないことに焦っているのがばれたのかもしれない…流石幼馴染みだ
「焔くん」
「はい」
「あの…颯くんから聞いたんだけど…恋人できたんでしょ?」
「出来ていましたけど今日フラれました。今はいません
…あの…ごめんなさい。
今はまだ前みたいに颯への気持ちを思い出せないけれど…でも颯と一緒にいたいんです…曖昧な関係だけれど…いいですか?俺…颯の隣にいてもいいですか?きっと思い出せないことで傷付けることも沢山あると思うんです…貴方たちの愛する大切な颯を…それでも…颯の隣にいてもいいですか?」
「…二人で…決めたことならいいよ。ねぇ。焔くん。生きているとねうまくいかないことも多くあるんだ。俺もアメリアと一緒になるまでは色々あった。一緒になった今でもそうだよ。すれ違い離れたこともあったし深く傷つけたことも一度や二度ではない…それでも最後に決めるのは自分自身だ。」
いつもの話し方とは全く違う。真剣な眼差し、心に響く低い声…男の俺でも見惚れてしまうほどカッコいい…
「最後に二人が笑っていられるのならそれでいい。それが俺たちが求める形でなくてもね。俺はずっと言っている通り焔くんのことが大切だし颯と一緒になって欲しいと思ってるけれど二人が決めてもしも離れることになったとしても二人が笑っていられるなら…それが俺たちの幸せになると思うんだ…焔くん。頑張って思い出さなくてもいい。颯と言う一人の人間をしっかり見ていて。自ずと答えは出てくるから。忘れている罪悪感で側にいるのではなく。それは約束してくれる?」
「はい…ありがとうございます」
「…颯」
「はい…」
「これからきっと泣きたいくらい悔しいことも苦しいことも悲しいこともあるだろう。それでもお前は焔くんと一緒にいると。そう決めたってことでいい?」
「はい。これまで俺は散々焔を傷付けてきました。これくらいなんでもありません。こうなったからこそ気付けたこともあった。やはり。俺は焔の側にいたいのだと。焔を離したくないのだと…焔のことを…好きだと…今度は俺が焔に好きになってもらえるように努力する番です。結果俺の思いは通じなくても二人で笑っていられるように…だから…見守っていてください」
「…わかった。一人で考えてどうしようもなくなったら俺たちを…周りの友人たちを頼りなさい。一人で抱えないで。颯も焔くんも一人で勝手に考えて勝手に完結してしまうから俺だって頼って欲しい。二人の悪い癖なんだ一人で抱え込むこと。一人で抱えられなくなってどうかなってしまう前に頼って」
「はい」
「うん。よっし!俺は二人が大好きだぞぉ!!」
「何それ」
「ふふ…焔くんとも颯くんともお話しできたから…リアちゃん。デート行こー!」
「…頼さんたら…片付けたら出掛けましょう。焔くん。ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます」
そうして支度をして出ていったのを見送った。
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