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第106話

大二郎&昌子side 「なぁ…昌ちゃん」 「ん?」 「あの焔が…美味しいって!」 「悪いことばかりじゃなかったね」 「そうだな」 焔はこれまであんな笑顔で美味しいといったことはない。いや。口には出さなくてもちゃんと目は物語ってたからそう思ってくれてるのは知っていたのだけどやはり口に出してもらえると違う。あんなに表現してくれることはもう随分と昔のことで…今の方が子供っぽいわがままもいってくれる気がする。 幼くなってしまったけれどこれまでの反動だと思えば可愛げもある。 「…焔はこれまでたくさん大人でいなきゃって思って気を張ってきたから…颯くんのこと記憶がないのは残念だけどでも…よかったのかもしれないね…二人の関係がとても…よくなった気がする」 「そうだな」 「…二人の想いが交わりますように…」 「そう…願わなくてもきっとうまく行く気がするよ。ほら…」 道路に向かう窓の外に仲良く笑い合いながら並んで歩いていく姿が横切った。 二人があんなに柔らかく一緒に笑いあったのはいつだったろうか? もう随分と幼い頃だったと思う。 「そうね…でも…心配だわ…あんなに隙を見せられちゃったら…ううん…変なこと考えるのは…止しましょう…」 「俺たちの子供だよ。だから大丈夫。」 だから…ねぇ…二人の想いが届きますように… そう願わざるを得ないのだ…

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