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第109話

そのまま意識を手放した俺が目覚めたのは保健室のベッドの上だった 「焔…よかった…大丈夫ですか?」 始めに視界に捉えたのは大好きな人 「颯…」 「焔。あなた倒れたんですよ。ここまで滋野くんが運んでくれたんです」 「大丈夫か?焔」 颯がそういうとひょこっと滋野が顔を見せてくれた。 「ごめんね。心配かけて…」 「いいえ。念のため病院へ。ほら。荷物です。もうすぐ昌子さんが来てくれますので」 「ありがと…」 そのあとやって来た母と共に学校をあとにした。 心配そうに見送る颯が気がかりで滋野に颯の事をお願いした。颯は俺と寝たことで前より色気が増した。変な人に何もされなきゃいいけど… 病院での診察は原因がわからないとのこと。颯のことだけ記憶がないことの焦りもありストレスがかかっているのだろうと言うことだ。 昨日もあんなに愛し合ったのに虚しいのはきっと颯を知ってる俺に苛立ってるからなのかもしれない。 もしくは…雪割と二人並ぶ姿がとても絵になったから… 俺は颯の隣に並んでも不釣り合いなように思えて苦しくなった 「焔」 「ん…」 「焦るな…と言っても…無理よね…私の知ってる颯くんのこと話ししようか?」 「ううん…今聞いたらまた変な風になっちゃいそうで…怖い…ねぇ。母さん」 「ん?」 「俺は…颯といてもいいのかな?今日ね雪割…あ。クラスメイトで生徒会長してるんだけど…二人で並んでるのがとてもお似合いで…俺じゃない方がいいんじゃないかって」 「…焔。誰と似合うとかは関係ない。一番大切なのは周りが見てどうかじゃなくて本人たちがどうか。颯くんは焔が眠ってる十日間毎日来てくれた。起きたときもとても喜んでくれた。焔が自分のことを覚えていないとわかってもあなたへの思いを私や大二郎さんに伝えてくれた。 「焔と一緒にいたい…孫の顔とかは見せられないかもしれない…でも…好きなんです…」 って。それなのに貴方が否定してどうするの?記憶はなくても…それでも貴方は颯くんが好きなんでしょ?」 「でも…その好きは…前と違うと思うの…きっと…もっともっと深くて暖かくて…ん…そんな思いだったはず…だって…大切だから…誰よりも大切だから…とても側にいたのに…いつも颯の事を先に考えて颯を思って気持ちを告げることもしないで…手も出すこともしないで…耐えて耐えて…どんだけ苦しかったんだろう…好きなのに颯が思う人はいつも違う人で…それでも…耐えて…だけど今の俺は自分の思うままに動いてしまう。颯が困るんじゃないかってそんなこと考えもしない…自分勝手で…本当に…身勝手で…俺…」 「いいのよ。それで。好きってそういうこと。前の貴方は素敵だった。けどね。無理しているのは見ていてわかった。他の人は気が付かない些細なことではあるけれど…私たちは親だから苦しさは感じてた…今の方が人間らしくていいところもある。…まぁ獣みたいに場所も問わず求めるようなことしなければいいんじゃないの?颯くんの同意を得ているのならそれでいいはず」 「ん~…」 「あれ?…」 家につくと人影があった。相手は勿論… 「おかえりなさい…」 「ただいま。颯」

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