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第110話

「颯。学校は?」 「早退しちゃいました。滋野と雪割に帰るように言われて…」 「そうなの?」 「すいません。迷惑だと思ったのですが…どうしても…心配で」 「ここまではどうやって帰ってきたの?」 「え?」 「一人で帰ってきたの?ねぇ!もう!!何してるの!!危険でしょ!!颯!!自分のこともっと自覚して!!何かあったら俺…俺…」 「ごめんなさい…でも…そう言われると思ったから…タクシーで帰宅してきましたよ?」 「タクシー…もう!!ダメなんだからね!!一人で行動したら!もう!!…無事で…よかった…よかったぁ…」 思わず颯を抱き締めていた。 「あの…焔…ここ…外…昌子さん…見てます」 「あ!!ごめん!!だって…」 「いらっしゃい。颯くん。上がって」 「ありがとうございます…」 頬を染めて遠慮がちに家に入ってきた颯。きちんと靴を揃えてあがってくるのはいつものことみたい。 リビングで母がお茶の準備をしてくれた。 「焔。大丈夫なのですか?」 「うん。心配は要らないって。変な病気とかではないらしい。そのうち落ち着くみたいだよ。まだ目覚めて間もないから安定しないのだろうって」 「でも!滋野が…胸を押さえて痛がってたって…だから…俺…」 「あぁ…えと…引かない?」 「何です?」 「雪割と並んでるの見て…ヤキモチ妬いちゃって…くるしくなっちゃったの…だって…すっごくお似合いだったから」 「んな…そんな…こと…え?…あの後雪割と話したのは貴方のことですよ。焔」 「俺?」 「焔への思い自覚したの?って…言われました…すっごく…お似合いだねって…でも何か様子がおかしいからどうしたのかって聞かれたから…あの…ごめんなさい。記憶のこと話しました…」 「記憶のことは別に隠さなくてもいいよ。みんなに伝えてもらった方がいいのかも。それより…お似合いって…いってくれたの?…雪割。」 「はい…」 「それ言われて嬉しかった?」 「え?」 「だって雪割のこと好きだったんでしょ?俺なんかとお似合いって言われて…嬉しかった?」 俺は意地悪だ…そんな問いかけするなんて…でも…聞きたいの… 「嬉しいに決まってるでしょ?確かに雪割のことは好きでした。2年ちょっと好きでいました。けれど今の俺の気持ちはもう雪割にはないです。何度も言いますが俺は焔…貴方が好きです。貴方じゃなきゃ嫌だ…貴方の思いは俺と違う。そんなことは百も承知です。でも…やっぱり…好きだから…お似合いって言われると…とても嬉しいんです。迷惑ですか?そんなこと言われるの」

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