110 / 124
第110話
「颯。学校は?」
「早退しちゃいました。滋野と雪割に帰るように言われて…」
「そうなの?」
「すいません。迷惑だと思ったのですが…どうしても…心配で」
「ここまではどうやって帰ってきたの?」
「え?」
「一人で帰ってきたの?ねぇ!もう!!何してるの!!危険でしょ!!颯!!自分のこともっと自覚して!!何かあったら俺…俺…」
「ごめんなさい…でも…そう言われると思ったから…タクシーで帰宅してきましたよ?」
「タクシー…もう!!ダメなんだからね!!一人で行動したら!もう!!…無事で…よかった…よかったぁ…」
思わず颯を抱き締めていた。
「あの…焔…ここ…外…昌子さん…見てます」
「あ!!ごめん!!だって…」
「いらっしゃい。颯くん。上がって」
「ありがとうございます…」
頬を染めて遠慮がちに家に入ってきた颯。きちんと靴を揃えてあがってくるのはいつものことみたい。
リビングで母がお茶の準備をしてくれた。
「焔。大丈夫なのですか?」
「うん。心配は要らないって。変な病気とかではないらしい。そのうち落ち着くみたいだよ。まだ目覚めて間もないから安定しないのだろうって」
「でも!滋野が…胸を押さえて痛がってたって…だから…俺…」
「あぁ…えと…引かない?」
「何です?」
「雪割と並んでるの見て…ヤキモチ妬いちゃって…くるしくなっちゃったの…だって…すっごくお似合いだったから」
「んな…そんな…こと…え?…あの後雪割と話したのは貴方のことですよ。焔」
「俺?」
「焔への思い自覚したの?って…言われました…すっごく…お似合いだねって…でも何か様子がおかしいからどうしたのかって聞かれたから…あの…ごめんなさい。記憶のこと話しました…」
「記憶のことは別に隠さなくてもいいよ。みんなに伝えてもらった方がいいのかも。それより…お似合いって…いってくれたの?…雪割。」
「はい…」
「それ言われて嬉しかった?」
「え?」
「だって雪割のこと好きだったんでしょ?俺なんかとお似合いって言われて…嬉しかった?」
俺は意地悪だ…そんな問いかけするなんて…でも…聞きたいの…
「嬉しいに決まってるでしょ?確かに雪割のことは好きでした。2年ちょっと好きでいました。けれど今の俺の気持ちはもう雪割にはないです。何度も言いますが俺は焔…貴方が好きです。貴方じゃなきゃ嫌だ…貴方の思いは俺と違う。そんなことは百も承知です。でも…やっぱり…好きだから…お似合いって言われると…とても嬉しいんです。迷惑ですか?そんなこと言われるの」
ともだちにシェアしよう!