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第114話

「久しぶりね。二人とも」 とても綺麗な人…その人の腕には小さな男の子が抱かれていた。 その子が俺に一生懸命手を伸ばし抱っこをせがむ。初めて会ったのに…何これ…嬉しい…可愛い… えみりさんに了承してもらって彼を抱っこしたら彼は凄く嬉しそうにしてくれた 「うわぁ…可愛い。こんにちは!」 七雲先生にそっくりだ。 「ちゃ」 まだ舌ったらずな話し方で一生懸命挨拶してくれる。少しだけお母さんから離してしまったけど彼はずっとニコニコ笑ってる。それがとても嬉しくて足を止めて名前を聞く 「こんにちは。お名前は?」 「そうちゃ」 「そうちゃん?俺は焔だよ」 「ほ?…ん?」 「ふふ…難しいね。」 とっても可愛くてずっとお話ししてた。先に席につく颯とえみりさんの後をゆっくりと追いかけた 颯side 「…何か…焔くん雰囲気変わったね」 えみりさんが抱っこしていた子供さんはあの時お腹にいた子供さんだ。克哉さんと洸哉さんにそっくりな男の子だった。その子が焔を見た瞬間に焔を気に入ったのか抱っこを強請ってた。凄く可愛い…焔は昔から小さな子供や動物たちに好かれやすかった。 その子を抱いている姿がとても似合ってて目を細めた。 「克哉さんから記憶のことは聞いてますか?」 「えぇ。」 「それからあんな感じになっちゃって。でも可愛いですよ。」 思わず笑みがこぼれた。少しだけ後方を歩く焔。ニコニコしながら何かお話ししてる。 本当に可愛いのだ。前の焔は男らしくてみんなが振り返るほど凄くカッコよかった。本人は無自覚だったけど。 その焔がこんなにニコニコと子供みたいに笑っている姿も愛しくて堪らないのだ。 「…やっぱり綺麗ねぇ…颯くん…貴方には笑顔がとても似合うわ。洸哉の言っていた通りね」 「えみりさんみたいな綺麗な人に言われると照れますね。ありがとうございます。子供さん…お名前…そうすけくんでしたよね?」 「そうよ」 先に席についてそこにおいてあったペーパーナプキンにえみりさんが更々と名前を書いていく。見た目と同じ。とても綺麗で繊細な文字は“颯哉”と書かれていた。 実は生まれる少し前に名前に同じ文字を使ってもいいかと連絡は来てて名前は知っていたけど実際文字にしてもらうと何だかむず痒い。 「嬉しいです。ありがとうございます」 「焔くんが妬いちゃうかしら?」 「そうかもしれませんね。でもそうなって欲しいというのが本音です。焔はあまりそういうのないので」 「そうなの?」 「えぇ。いつもそういうことは隠してしまうんです。俺は焔みたいに鋭くないのでわからないんですよ。本音なのか違うのか…洸哉さんの変化にも…気付けなかったし…こんなに長く一緒にいるのに恥ずかしいことですけど」 「人ってそういうものなんじゃないかな?結局は違うのだから」 話していたら車を停めに行ってた克哉さんもやって来て俺の前に腰かけた。後から入ってきた克哉さんと一緒に焔もきて颯哉くんは今も焔の腕の中に抱かれてた。

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