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「んっ、う、その触り方やめろ七光り……」
大翔が耐えきれず懇願の色を滲ませると、皇我はますます笑みを深くした。
「おう、今の声わりとよかったぜ。その声でちゃんと対応しろよ。『お帰りなさいませ、ご主人様』ってな」
「んな媚びた感じで言えるわけないだろ、ぎゃっ」
大翔の拒絶を聞くやいなや、皇我は大翔のパニエの中に手を突っ込んだのだった。
「可愛くねー声出すなよ。ちゃんと言えば触るのやめてやるから」
そう言いながら皇我は大翔のボクサーパンツぎりぎりまで彼の太股を撫で回した。焦らすように皇我がそけい部をなぞると、大翔の唇から甘く吐息が漏れた。
からかっているにしてもたちが悪すぎる。大翔は皇我を睨みつけてみせたが、眼鏡の奥、情欲に潤んだ瞳では迫力にかける──むしろ逆効果だった。これは不本意ながら言うことを聞くしかなさそうだ。でないと刺激が強すぎてどうにかなってしまいそうだから。
「お、お帰りなさいませ、ご主人様……」
「ぎこちねーな」
「お帰りなさいませ、ご主人様っ!」
「……ま、及第点ってとこか。次は手でハート作って『萌え萌えキュンっ』だ」
「ハァ!? ぜってーやだ!」
大翔がひときわ大きい声をあげると、皇我は大翔のスカートをパニエごと上にめくり上げた。
「めくるなっ」
「これ」
皇我は大翔の制止を無視し、彼の下着の膨らみを示して言った。
「他の奴に言ってもいいの? お前が嫌いな奴に触られて反応する変態だってバラしても──」
「あのな!」
大翔はスカートをめくる皇我の手をはたき落としながら叫んだ。
「お前だってそうじゃねーか」
指摘する大翔の視線の先には皇我のスラックス。中心が膨らみを帯びている。皇我は舌打ちして吐き捨てるようにこう言った。
「バレたか」
「バレるわ!」
「ただ俺がバラすのとお前がバラすのとでは意味が違うだろ?」
「それは……」
皇我が大翔のことを揶揄すれば面白がる者もいるかもしれないが、大翔が皇我のそれを揶揄したらあらぬ誤解を生んで大騒動になりかねない。
「じゃあ言うしかないよな。ほら『萌え萌えキュン』」
皇我の強要に大翔は諦めの色を滲ませ、深呼吸のようなため息を一つした。そして覚悟を決めたようにきっ、と目尻を上げ、ハートの形を手で作りながら高い声を出した。
「萌え萌えキュン!」
「ぜんぜん萌えねーけど仕方ないか」
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