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「おうよ、これで満足か七光り。それに今のでもう萎えっ萎えになったから、これで俺の弱みも握れねーな?」 「それはどうかな」 皇我は大翔の腰をがっしり掴みなおし、自身の身体を密着させて下半身を大翔のそれに押しつけた。皇我がわざと、ぐり、と少し角度を変えると、大翔の意思とは反して快感が襲い来る。萎えていたそれはすぐに元通りになってしまった。 「ほら」 「ほら、じゃなくて」 「なんならこのまま俺の部屋でするか?」 ぜんぜん本気じゃなさそうな口ぶりで皇我が大翔に聞いた。無論からかっているのだ。 「するわけねーだろ! 吐くわ!」 噛みつくような大翔の言葉に、皇我はわざとらしく大きなため息を吐いてみせた。 「ほんっと可愛くねーな。じゃあ次はおいしくなる魔法かけてみろ」 「おいしくなる魔法?」 「メイドカフェでは料理に『おいしくなーれ、おいしくなーれ』って魔法かけんだよ」 「薄々気づいてたんだけどお前、メイドカフェに詳しいよな?」 「親父の映画の関係で取材に付き合わされたんだよ。姉さんと弟と一緒に連日メイドカフェ通いだったんだ。目立つからネットニュースにも載せられて……あの時は疲れた」 「七光りも七光りで苦労があんのね」  皇我の父は世界的な映画監督であり、母もハリウッドからオファーがあるような大物女優だ。六人兄弟姉妹の五番目である皇我は他の兄弟のおかげで芸能界入りを免れているものの、華やかな容姿のせいもありいつもスカウトに目を付けられているのだとか。 「七光り七光りうっせーな、今はご主人様だろうが」 「お前を主人とは認めたくねーし」 「力づくでも認めさせてやるよフツメガネ」 「暴力反対。ただでさえてめえは馬鹿力なのに……って何! 近い近い近い!」  皇我は大翔の顔に自分の顔を近づけた。きりりと上がった眉、アーモンド型の目に長い睫毛。すっと通った鼻も綺麗だ──なんて、大翔が皇我の顔立ちにうっかり見とれてしまっていると、ふいに皇我は大翔の首筋に顔をうずめた。 「おま、何して……っ」 皇我はそのまま大翔の首に舌を這わせた。大翔はびくりと身体をしならせ、口の端から吐息を漏らした。 「殴る蹴るよりもお前にはこっちの方が効果あるみたいだからな」 「う」 「ほら、『おいしくなーれ、おいしくなーれ』って言えよ」 顔を上げてそう言ったかと思えば、すぐにまた皇我は大翔をせめるように舐めた。鎖骨の窪みを舌先でなぞられ、大翔は身震いした。

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