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第6話

 *  夜通し歩いて、ローレニアの町へ着いたのは昼過ぎだった。仲間たち、特に体の小さい者は疲労困憊(ひろうこんぱい)で倒れた者も数人いる。リアムの友人ラファエルもその内の一人だ。  倒れた者は傷が付くのも構わず、兵にズルズルと引き摺られていた。その様子を見ていられず「担がせてくれ」と申し出れば、ルイの部下たちは反対したが、ルイが手首の縄を解いてくれた。  リアムを見ていた仲間たちは、体力の残っている者が同じ様に倒れた友人を背負った。縄の代わりにつけられた魔法封じのバングルを見て、ダメもとで「疲弊した仲間を魔法で治癒したい」と頼んだが、それはきっぱり断られた。魔法は武器にもなるから当然だろう。  途中で休憩を一回挟み、倒れた者もなんとか歩けるまでに回復したが、町に着く頃にはリアムの膝と腰もガタガタだった。喉も渇いたし、気持ちが悪くて倒れそうだが、強い意志だけでなんとか意識を保っている。  霞む視界と震える足を叱咤(しった)して踏ん張るけれど、疲労のせいか脱水のせいか呼吸まで苦しくて、収容所でも何でも良いから早く体を休ませたかった。  自国とは違って石造りの立派な家が建ち並び、野次馬が自分たちを遠巻きに眺めているが、そんなものに目を向ける余裕は全くない。 「リアム、来い」 「────」  ルイはルーティアを発つ時と同じ様に手を差し出してくるが、情けをかけられているのが悔しくて、Ωの弱さが悲しくて、リアムは馬上の彼をキッと睨み付ける。 「意地を張るな」  だが、ルイはリアムの体を片手でひょいっと持ち上げるとそのまま馬に乗せてしまう。 「とりあえず全員基地へ連れて行け。基地についたら奴隷の洗浄と手当てを。負傷の酷い者は魔術師を呼んで回復させろ。内勤している者に引き継いだら休んでいい。リアムは俺が後から連れて行く」 「承知しました」 「魔法封じ(バングル)を忘れるなよ。それとノアとジュリアンはレオが担当しろ。基地に着いたらシモンへ引き渡せ」 「はっ、シモン様にお伝えいたします」  ルイの部下たちが皆を連れて歩いて行くのをぐらぐらする視界の中で追う。 「ノアを……どうするつもりだ」  ルイの口から出た仲間二人の名前、そのうちの一人は自分の親友で、混濁していた意識が少しだけクリアになる。 「どうもしない。ただあの二人は魔力が強いだろう。だからそれに対応できる者に任せる。それより自分の心配をしたらどうだ?」  ルイは後ろからリアムの腹に手を回すと、馬をゆっくり歩かせた。 「ボロボロだな。少しイタズラしただけで壊れそうだ。……そうまでして仲間を(かば)うとは」  呆れたような声でそう言って皆が向かったのとは違う方へ進む。 「ラファエルは、俺の友達だ。友達を助けるのは当然だろ」 「ふ、優しいな。…………優しいが、愚かだ」  ルイは少しだけ寂しそうに、最後は冷たい声で笑った。

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